武田 尚子
ITで「より深く、広く、長く」
先週、ワコール卸売事業本部の2019春夏シーズン総合展が開催された。
多様な新商品はさておき、ワコールの記者懇談会の中でも一つの柱に置かれていたのが、「オムニチャネル戦略」。
それは単にEC強化といったものではなく、あくまでリアル店舗を基点にしたもので、百貨店をはじめとする従来からの「お客様」とデジタル技術によって「より深く、広く、長く」つながることを目指している。
ひと言でいうと、チャネルや部門ごとに散在しているデータ(顧客、在庫、商品)を一括管理するオムニチャネル基盤を構築し、そこを軸にWEBやアプリ、タブレットなどを通じた様々なサービスを各チャネルで展開していくというもの。
つまり、店頭における顧客カルテや購買データを電子化、一元化することによって、その方が別の店で買い物する時も情報が共有され、「接客支援タブレット」によって、例えば展開の少ないサイズだったり、綿素材の要望だったり、過去購入の商品を要望されたりといった、その方特有のニーズにきめ細かく対応できるという。
また、「3Dボディスキャナー」(ワコール独自の計測技術で最適なブラジャーを導き出す3D計測機)、さらに「AIによる商品提案」の開発も進め、販売員とのやりとりが苦手なお客も自分に合ったサイズがストレスなく選べるようなサービスを、来春から徐々に試験運用を始めていくとしている。
これは同社の派遣ビューティーアドバイザーのいる主要百貨店を中心とする取り組みになるが、ECサイトを持たない各地域の下着専門店とも、ワコールECサイトを連携させ、地域ごとの顧客関係を密接にしながら、継続的な事業運営をおこなう支援を打ち出している。
展示会会場でも、パネルなどで「オムニチャネル戦略」を紹介
渋谷ヒカリエで開催された2019春夏シーズンの展示会。顧客と長くつながることを象徴した「環」をテーマにした会場デザイン