進士 恵理子

2020 29 Mar

接触制限措置14日目ベルリン

「私たちはあなたたちのために病院にいるので、あなたたちはお願いだから家にいて!」

2020年3月29日日曜日。今日からサマータイム。春分の日も過ぎて暖かくなる頃。普段なら長い冬がやっと終わった喜びにウキウキしているはずが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、ここベルリンは「接触制限措置」が取られ、社会的生活のあちこちにストップ!がかけられている。

3月初頭からイタリアでの感染者数の増加を見聞きし、もしかしてドイツでも・・・でも、まさかね。と気楽に考えていた人たちは多かったはず。それが決定的に「これは本当に大変なことが起こるかもしれない」と考え始めたのが二週間前の3月13日金曜日の夕方に入った臨時ニュース。週明けから、イースター休暇後まで学校、保育所が閉鎖される、との通達。

それまでも参加者が1000人を超える催しは禁止されてきたのだけれど、コンサートも劇場も美術館もメッセも、自分の社会生活に直接関わってくるものではなかったので割とみんな「経済的危機が迫り始めてる感」はあっても感じていても身に迫るコロナ危機はなかった。

子供達が家にいるから働く親たちは誰かしら子供の面倒を見るためにHome Officeをすることになる。何よりも本質的なことを言えば「感染拡大のスピードを抑えるための措置」なので会社で仕事をするなとは政府は言っていなくても、会社から直接社員にHome Officeの勧めが届いてくる。

主人曰く、「子供達が周りで騒いでなかなか仕事にならない時には休暇申請してね」とやんわり言われ、そんなの(休暇取得を強制させられるなんて!)ふざけてるー!と憤慨していました。私は現在幼稚園教論免許取得の学校に働きながら通っている身でしたので、幼稚園での実習が急遽キャンセルとなり、自分の子供を一日中面倒見ることになった、、、という訳でできるだけ主人にはしっかり働ける環境を、子供達には規則正しい時間割で飽きないように工夫して毎日快適に過ごせるようにすることに勤めようと思ったのが、ちょうど二週間前。

Whatsappのチャットでは幼稚園で子供が同じクラスに属するママたちから「お互い助け合いましょ!」のグループが立ち上がる。月曜日うちに来てもいいわよー、とか来週水曜日うちの子どこか遊びに行けるー?とのメッセージが飛び交う。同時に同様のご近所さん向けの相互手助けプラットホームができたり。買い物に行けない人(怪我人病人妊婦さん)のために家事代行をするというもの。

しかし結果から言えば私たちのママグループは頓挫した。結局こうやって素人が子供を何人も預かっても長続きしないし、結果からえいえば感染拡大をやめようと言っているのに、子供から大人まで未だに接触していれば感染ルートがあちこに絶えないことになり、結果現状の接触制限措置が長引くことになる!

こりゃしばらく出歩くのよすしかないな。本末転倒を避けなくては!とみんな本気になったのがメルケル首相の演説。演説というより、市民への語りかけ、お願いをしますよー。と言った心のこもったスピーチだった。

それ以降、ベルリンはスーパー・ガススタ・薬局・病院・銀行・郵便局・宅配サービス・クリーニング・コインランドリー・新聞販売店・卸売店以外全ての店舗・施設・活動が禁止に。

○バー,ナイトクラブ,ディスコ,酒場,その他類似の施設。
○劇場,オペラ座,コンサートハウス,博物館,その他類似の施設。
○見本市,展示,映画館,公園,体育館,宝くじ売り場,その他類似の施設。
○売春宿,その他類似の施設。
○(公共,民間を問わず)スポーツ関連施設,プール,フィットネススタジオ,その他類似の施設。
○アウトレットセンター,その他類似の施設。
○子供の遊び場。
(3)以下の行為は禁止される。
○サークル,スポーツ施設,レジャー施設における会合,市民学校,音楽学校,その他学校以外の教育施設(公共・民間を問わない)の施設の利用,バスによる旅行ツアー。

 

そんな訳で、ベルリンでの生活は皆、家で仕事するか、家で家事と子育てをし、時々新鮮な空気を吸いに散歩、ジョギング、サイクリングをしに外出してまた帰って来て家で夕食をとって寝る。というむちゃくちゃ健全な生活になって来ているのである。この際、スポーツは一人で。外出は家族とのみ可能という徹底ぶり。砂場、ブランコがある子供の遊び場は一切立ち入り禁止。遊具に触って菌がうつるから?

子育て世代には制限された生活が子供の誕生以来続いているので、結構辛いものはないんだけど、一人暮らしの人で特にすでに疾患のあったうつ病、アルコール中毒や、子供のいる家庭の家庭内暴力の増加がこの二週間経った今顕著になり始めている、とニュースで言っている。

それだけ緊迫した暇がダラダラ続いている。ただ嬉しいことに感染者の数の増加にストップがかかったということだ。イタリアやスペインのように病院に感染者が殺到し、ベット呼吸器の不足、医者看護婦がダメになることを避けるためには、私たちの自由だとか経済だとかは二の次にして事態の収束に向けた連帯行動が必要であるということだ。