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「セリーヌ 」が2021秋冬メンズコレクションをデジタル形式で発表
「セリーヌ(CELINE)」は2021年2月8日、2021秋冬メンズコレクションをデジタル形式で発表した。
今季のテーマは“ティーン・ナイト・ポエム(Teen Knight Poem)”。舞台となったシャンボール城はフランス北中部に位置する城で、ロワール渓谷に点在する城のうちで最大の敷地面積を誇る。「セリーヌ」のアーティスティック、クリエイティブ・イメージディレクター、エディ・スリマンは十代の頃にシャンボール城を訪れて、荘厳なモノクロームの光景に魅了されたというが、その影響からか、今回のコレクションではシックなカラーパレットが主体となった。コレクションについてエディは「新しいロマン主義。若者は、ゲームと新しいアイデンティティの架空のコードで自分自身を表現している」と説明しており、クリエイションを通して中世から受け継がれるゴシック様式の再考を試みたといえる。
13分間にわたるコレクションフィルムは軽快なドラムロールと共に幕が上がる。馬に乗った騎士が「セリーヌ」のモノグラムがあしらわれた旗を掲げ、シャンボール城へと駆けるカットは観る者をその圧倒的な世界観に引き込む。サウンドトラックは、今回のショーのためにザ ルーム(THE LOOM)によって特別に制作されたものだ。
若者は架空のコードでアイデンティティを表現しているというのがエディのステイトメントであるが、前回の2021発夏コレクションと比較しても今季はゴシックかつ神秘的な雰囲気が前面に出ている。彼が同コレクションを「若者とルネサンスへの頌歌」と位置付けているように、まさにロマン主義を現代的に解釈したようだ。また「セリーヌ」にとって、メンズウェアは常にコンセプチュアルなアイデアと現代的なスタイルを探究してきたが、今季はフレンチなハイファッションが中心。そうしたコレクションピースは19世紀のロマン主義と、エディの象徴的かつ現代的なファッションとの境目を曖昧にする。
ルックの中でも特に印象的だったのが、フリルシャツのレイヤードやジェンダーレスで力強いアイメイクだ。他にはウォッシュドデニム、スリムタイ、レザー、肩落ちのコートといった定番のアイテムも数多く見られた。コート類はロング丈で肩が落ちるシルエットや、ラペルからフードに繋がっているケープのようなアイテムまで幅広く、厳粛な祭服さながらのムードである。
一方でスタッズが散りばめられたロゴ付きのフーディーやニットのヘッドピース、バックロゴのダウンジャケットなど、ストリートへのリスペクトも見受けられる。存在感のあるチェーンネックレスや毛皮風のボワブーツといったアイテムも象徴的で、若者の行き場のない衝動を中世の騎士に見立て、新たなロマン主義を提言しているかのようだ。
全体として今回のクリエーションは、中世やゴシック、フランス・ルネサンスの影響が色濃く出た、スタイルと機能の刺激的な探究であり、エディによる新たなビジョンがより明確化されたコレクションに仕上がっていたのではないだろうか。