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「エージーファクトリー」アルベール・エルバスが享年59歳で死去 多くの業界関係者が死を悼む
ファッションデザイナーのアルベール・エルバスが2021年4月24日、仏パリのアメリカン・ホスピタルで死去した。享年59歳だった。エルバスが昨年10月にスタートした新ブランド「エージーファクトリー(AZ FACTORY)」のパートナーであるリシュモンにより発表された。死因は新型コロナウイルスよるものだといわれている。
エルバスは、98年には「イヴ・サンローラン・リブゴーシュ(Yves Saint Rive Gauche)」のディレクターに。2001年より2015年まで、「ランバン(LANVIN)」のアーティスティック・ディレクターを務めた後、2019年にリシュモングループと共同で会社を設立し、今年1月のパリコレクションで最初のコレクションを発表したばかりだった。
この訃報に際し、リシュモン会長、ヨハン・ルパートは「同僚としてだけでなく、最愛の友人を失いました」「私はいつも彼の知性、感受性、寛大さ、そして無制限の創造性に感銘を受けてきました。 彼は並外れた暖かさと才能のある人であり、彼の独特のビジョン、美しさ、共感は消すことができない痕跡を残しています。 アルベールが女性のために作ったスマートファッションの夢を実現するための最後の取り組みを間近で見られて事はとても光栄でした」と語った。
ジャーナリストのスージー・メンケスは自身のインスタグラムで「女性を第一に考えた機知に富み、賢明で気まぐれなデザイナーは、3週間に及ぶ新型コロナウィルスとの闘いの末、この世界を去りました」とポスト。イタリアのファッション批評家、アンジェロ・フラッカヴェントは「イル・ソーレ24オーレ」紙にて「彼はユーモアとカリスマ性に溢れ、知的で鋭く、決意とビジョンに満ちた一流の専門家でした」「ヴィンテージを再生したり、大げさに装飾したりすることで、誰もが服を作ることができると考えている現代において、エルバスは人の体を完全に把握して、どんなサイズでも体を美化する、独特の才能と能力を持っていました」と語っている。
「ヴォーグイタリア」での記事はエルバスとの過去のインタビューでの彼のコメントを盛り込みつつ、「彼の人生がすばらしいストーリーであったことは確かです」と締めくくっている。イタリアの女性誌「グラツィア」は記事の最後に「ランバンの2021秋冬キャンペーンムービーのフィナーレで、ピットブルの歌の音符に合わせて踊る、アイロニックで非礼な彼のことを思い出したいと思います」と締めくくり、そのムービーを掲載した。
またイタリアの新聞「イル・フォリオ」紙では、エルバスが「スペイン風邪の後、パリでは狂乱の20年代と呼ばれる非常に革新的な時代がありました」「この時代はジャズが生まれましたが、ジャズは他の人と一緒に即興を奏でる音楽でありオープンな対話です」「私のジャズを奏でるのです」と語っていたとし、これからが再生のための時代となると信じていたことを報じている。
アルベール・エルバスの冥福を祈る。
文:田中美貴