繊維ニュース 編集部ブログ

2020 12 Nov

突き抜けた「リコール」

 

【東京本社】新型コロナウイルスの影響は、ファッションデザイナーの心理や内面にも及んでいる。自粛期間中に21春夏シーズンの作業を進めなければならず、自宅やアトリエにこもっていた人も多かった。本棚にあった画集や写真集からインスピレーションを得たデザイナーや、原点回帰となるアーカイブ作品を再び打ち出すデザイナーもいた。

 色鮮やかな植物柄や自然をモチーフにしたアイテムも展開されている。デザイナー自身が感じた“癒し”を表現するコレクションも多かった。外出できないいらだちや混迷を極めるマーケットを表現するようなプリントもあり、密を避けるように雨空の屋外でショーを実施するデザイナーもいた。

 この難しい局面で、突き抜けたコレクションを見せたのが「リコール」だった。違和感のある組み合わせや劣化の途中経過を描写するドレスを披露している。未来の定番や日常服を予見するクチュール服は、さまざまな価値観が混ざり合ったものだ。現代人には異様に見えても、未来では普通のプロダクトなのだろう。ここ東京で、宗教観や人種を超えた服が提示されている。(市)