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桑原 ゆう

2019 04 Feb

31Jan2019_染田真実子クラヴサンリサイタル〜音の玉水〜東京公演

Thanks for the beautiful entire program of her recital including her great performance on its world premiere of my new piece for solo cembalo "Three Different Time Fields and the Voiceless Song."


近江楽堂での染田真実子さんのクラヴサンリサイタルにて、チェンバロソロのための《三つの時間と声なき唄》が世界初演されました。時間をかけてじっくりと準備され、大変素晴らしいリサイタルでした。


以下、《三つの時間と声なき唄》のプログラムノートです。アイディアのベースは、他の近作でも使用していますが、チェンバロのカプラーやストップの操作がコンセプトに重なり、より説得力のあるものになったのではと思います↓

"最近は、形式をいかに見出すかということに焦点を当て、作品を書いています。私の創作の土台には、日本の音と言葉を源流から探るというテーマがあります。能の音楽から感じられる空間の伸縮、声明作品を書きながら考えさせられる法要の形式とその意味などを踏まえ、自分なりに時間を構築する方法を探そうとしています。
《三つの時間と声なき唄》では、同時に、しかし、個々に円環状に存在する、テンポの違う三つの音楽の間に形式を見出そうとしました。
第一の音楽では、声や弦楽器によるグリッサンドの線形を鍵盤楽器で表現しようと試みました。拍子の頻繁な変化と強拍の位置の入れ替わりによって、独特のうねりを表出しています。両手の動きが合わさり、あくまでもひとつの太い線が描かれます。これは、声明からも発想を得ています。質の違う声が合わさった声明の音声は、色とりどりの紐を編んでつくった太い紐のようなものだといわれています。
第二の音楽は、1拍子を基本とし、リュートストップを伴う点描の音楽です。途中から、チェンバロのいわゆる通常の音が重なり、多声的に聴こえることを想定しています。
第三の音楽が「声なき唄」です。真実子さんのご実家のある奈良、東大寺二月堂の修二会で唱えられる、宝号といわれる部分の旋律、「南無観自在菩薩」のふしに基づいています。ただし、「声なき唄」とあるように、声を出さずにこころで唱えるようにして、鍵盤のタッチのノイズのみで演奏されます。私が奈良となにか関係性があるとしたら、それは唯一、声明の取材で訪れている東大寺修二会です。二週間の法要のうち、ひと晩を選んで足を運び、その晩晨朝まで聴聞し、翌日、日没まで聴聞して帰京するということを繰り返して、数年かけて法会の全体を体験しようともくろんでいます。
私たちは、ラジオのチャンネルを切り替えるようにして、これらの三つの音楽を行き来しながら聴いていくことになります。チェンバロのストップを切り替える動作が、まさにスイッチを切り替える動作と重なります。"

 

 

 

 

 

 

 

染田真実子クラヴサンリサイタル ~音の玉水~ 東京公演

 

田中カレン: 香草の庭

黒田崇宏: Gradualism II (委嘱作品)

桑原ゆう: 三つの時間と声なき唄 (委嘱作品)

根本 卓也:《ことわざ》~村上春樹の短編による前奏曲・メロドラマとフーガ~ (委嘱作品)

武満徹: 夢見る雨

増本伎共子: Diary-日々の移ろい ~ヒストリカル・チェンバロ ソロのための… (委嘱作品)

 

 

2019年1月31日 (木)
@近江楽堂 (東京都新宿区西新宿3丁目20-2 東京オペラシティタワー3F)
演奏 | 染田真実子 (チェンバロ)

mamikoclavecin.wixsite.com/m-somedaclavecin/concerts

 

 

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旧ブログ "桑原ゆうの文化的お洒落生活のすすめ"はこちら (現在少しずつ記事を移行中です。)