船橋 芳信

2018 24 Oct

吟遊詩人、IL TROVATORE

パルマ、ベルディ・フェスティヴァルに行く。

1580年に建てられたピロッタ宮殿、パルマの中心地に、その偉容さを伝える。
その宮殿の中に、気で創られた劇場、ファルネーセ劇場でのオペラ、イル・トロバトーレ
(吟遊詩人)の上演である。
指揮者ロベルト・アバド、
演出、ボブ・ウィルソン、
キャスト
マンリーコ ジュゼッペ・ジパーリ (テノール)
レオノーラ ロベルタ・マンテーニャ(ソプラノ)
アズチェーナ ルーカ・カザリン  (メッゾソプラノ)
ルーナ伯爵 フランコ・ヴァッサッロ(バリトン)
 
ベルディ中期(1853年)の傑作のオペラである。
165年以上昔、まだ日本は幕末、武士が刀を差していた時代である。
ベルディは、38歳で1851年にリゴレットを初演、大成功を納めている。
壮年にさしかかったベルディは、劇場からの依頼抜きで自らの選択に依る作曲に取りかかった。
イル・トロヴァトーレ(吟遊詩人)は中世の騎士物語、男女の恋愛、ジプシーの女占い
、とテーマが入り組んだ主題のストーリーを、じっくりとオペラ作曲に取り組んだ作品である。
又フランス語にも翻訳し、グランドオペラ様式化もしている。
 このパルマでの、ファルネーゼ劇場は、フランス語版が上演された。
ボブ・ウィルソン、舞台監督は、特異なそのスタイルでのオペラ演出は定評がある。
好きな舞台監督でもある。歌手に直立不動の姿勢を要求し時折、腕の動きを加えさせたり、
歌手達を人形のように扱っていた。舞台は一枚の絵画が、光、証明の色に依って、場面設定を表現していた。
ファルネーゼ劇場は、木造建築である。その長い歴史は、世界遺産に指摘されている。そのために、冷暖房は加えられていない。
指揮者ロベルト・アッバードは丁寧に真摯なその指揮棒は、ベルディのオペラ音楽への若さの情熱を感じさせられた。
150年前の音楽劇、オペラは、現代から遡ってその時代の世界を表現する事、それもクラッシックな解釈だが、
ボブ・ウィルソンは、現代にその吟遊詩人の物語を咀嚼し、今の感覚から、ベルディの時間へと遡行し、
現代の知性、思想、感覚を吹き込んで、イル・トロヴァトーレを演出した。
 パルマの夜は瞬く間に終わった。
招待してくれたマエストロ、ロベルト・アッバードに挨拶をして、ミラノへ戻った。