船橋 芳信

2017 28 Dec

マエストロ・グァルテロマルケージ氏、ご逝去!

26日、マエストロ・グァルテロマルケージ氏が、ご逝去された。87歳だった。

レストランランピーナの親友シェフ、リーノの紹介で、何度も食事を供にした。

引退された昨今は、日曜日の夜には良く、ランピーナで食事をした。

彼のイタリア料理界に於ける功績は、

1970年後半、フランスから戻って始めた、NUOVA CUCINA ITALIANAである。

それまで世界を席巻していたフランスの新しい料理、Nouvell Cuisineのイタリア版である。

それは、見せる料理、大きな皿に、調理された料理をまるで絵画のように並べ、見る感動を演出し、

舌の上に載せては、食材のコンビネーションに気を衒い味のオーケストレーションを指揮していた。

食べると言うレストランでの行為に、アート感覚を加え、食卓に絵画性を追求した。

 一年程前,スカラ座の一階に在るマルケージーノで夕食の席を予約した時、

わざわざ、挨拶に来てくれた。

其の時食べたメニューに、サインを残してくれた。リゾットアラミラネーゼには、

10センチ四方の金箔が載せられ、サフランの薫り漂うリゾットは、芳醇な美味しさに、

手の込んだ調理、手間と時間がかけられたプロの味に、

感動させられたのを思い出す。其の味には仕事の意味を痛感させられた。

 又サービスに於いても、ガス入の水を頼んだ私には、細長いコップが於かれ、

ガス無しの水を頼んだ連れには、低いコップを、供されていた。

この事で、ウェイターはお水は、ガス入?ガス無し?と訊く事はなく、

実にスマートなサービスであった。

 メインディッシュは、『赤と黒』と言う真っ赤なトマトソースに

イカスミで真黒に焼いたアンコウを頂いた。

お皿は四角い真黒なお皿である。

マルケージーノは、スカラ座の一階にある。スカラ座は、1800年、仏蘭西の文豪スタンダールが、

ミラノにナポレオン軍の将校として入る。彼はオペラファンとなってスカラ座に足繁く通っていた。

マエストロに其のスタンダールの『赤と黒』からインスピレーションを?と尋ねた。

「いや、あのメニューはルーチョ・フォンタナの作品、赤と黒から取っているんです。

しかし、スタンダールの赤と黒も良いな。」

 マエストロ・グァルテロマルケージ氏のご冥福を祈る。