船橋 芳信
マエストロ・グァルテロマルケージ氏、ご逝去!
26日、マエストロ・グァルテロマルケージ氏が、ご逝去された。87歳だった。
レストランランピーナの親友シェフ、リーノの紹介で、何度も食事を供にした。
引退された昨今は、日曜日の夜には良く、ランピーナで食事をした。
彼のイタリア料理界に於ける功績は、
1970年後半、フランスから戻って始めた、NUOVA CUCINA ITALIANAである。
それまで世界を席巻していたフランスの新しい料理、Nouvell Cuisineのイタリア版である。
それは、見せる料理、大きな皿に、調理された料理をまるで絵画のように並べ、見る感動を演出し、
舌の上に載せては、食材のコンビネーションに気を衒い味のオーケストレーションを指揮していた。
食べると言うレストランでの行為に、アート感覚を加え、食卓に絵画性を追求した。
一年程前,スカラ座の一階に在るマルケージーノで夕食の席を予約した時、
わざわざ、挨拶に来てくれた。
其の時食べたメニューに、サインを残してくれた。リゾットアラミラネーゼには、
10センチ四方の金箔が載せられ、サフランの薫り漂うリゾットは、芳醇な美味しさに、
手の込んだ調理、手間と時間がかけられたプロの味に、
感動させられたのを思い出す。其の味には仕事の意味を痛感させられた。
又サービスに於いても、ガス入の水を頼んだ私には、細長いコップが於かれ、
ガス無しの水を頼んだ連れには、低いコップを、供されていた。
この事で、ウェイターはお水は、ガス入?ガス無し?と訊く事はなく、
実にスマートなサービスであった。
メインディッシュは、『赤と黒』と言う真っ赤なトマトソースに
イカスミで真黒に焼いたアンコウを頂いた。
お皿は四角い真黒なお皿である。
マルケージーノは、スカラ座の一階にある。スカラ座は、1800年、仏蘭西の文豪スタンダールが、
ミラノにナポレオン軍の将校として入る。彼はオペラファンとなってスカラ座に足繁く通っていた。
マエストロに其のスタンダールの『赤と黒』からインスピレーションを?と尋ねた。
「いや、あのメニューはルーチョ・フォンタナの作品、赤と黒から取っているんです。
しかし、スタンダールの赤と黒も良いな。」
マエストロ・グァルテロマルケージ氏のご冥福を祈る。