芹澤 絵美
理想的なセラードアー
ニュージーランドのピノ・ノワールの2大産地といえば、
南島のセントラル・オタゴと、北島のマーティンボローの2つ。
この2カ所は味わいに大きな違いがあり好みも分かれるところです。
ニュージーランド・ピノ・ノワールのファンにとっては、
両地域とも1度は訪れてテイスティングに回ってみたい場所だと思います。
ということで、
オークランドと同じ北島にあるマーティンボローに行ってきました。
お目当ては、アタランギ・ヴィンヤード、ポピーズ、ジョーナー・エステート、
グラッドストーン・ヴィンヤードの4つ。
もともと、アタランギ・ヴィンヤードのセカンド・ラインである「クリムゾン」が買いたくてこのドライブ旅行に出かけたこともあり、テイスティングに回るならばアタランギ・ヴィンヤードは必ず行きたいヴィンヤードでもありました。
アタランギ・ヴィンヤードのテイスティングは、
他のセラードアーと違ってアポイントが必要です。
小さなファミリーヴィンヤードなので、
11:00と14:00の1日2回しかセラードアーを開けません。
おそらく、1度につき最大で6組12名までだと思います。
大抵のヴィンヤードのセラードアーはアポイントの必要が無く、
次から次にやってくるテイスティング客にひたすらワインを注ぎ、
ワインについて質問したいことがあっても十分な対応が出来ず、
どんどん人が入れ替わって立ち飲みバー状態の時も多々あります。
しかしアタランギ・ヴィンヤードは、
まずはヴィンヤードに案内され畑の説明から入ります。
ここでも質問可能なので、除草はどうしているのか、葉かきや脇芽かきはするのか、フルーツの間引きはどこまでするかなど、細かいことも聞けます。
ちなみに、目の前のブロックはスコット・ヘンリー仕立てでした。
そしてヴィンヤード設立に至った歴史や、
ニュージーランドのロマネ・コンティと呼ばれる逸話についても話が聞けます。
アタランギ・ヴィンヤードに植えられているピノ・ノワールは、
エイブルクローンとポマールクローンが主。
そのうちのエイブルクローンの誕生秘話がロマネ・コンティと関係があるのです。
ニュージーランドからフランスはブルゴーニュに行った旅行者が、
DRC社の特級畑ロマネ・コンティに忍び込み、
穂木を自分の長靴に隠して違法にニュージーランドに持ち込もうとしました。
それを当時の税関職員(MUF)だったマルコム・エイブルが没収し、
こっそり自宅の畑に植え増やしたそうです。
マルコム・エイブル氏とアタランギのオーナーであるクライブ・パトン氏が友人同士であったこともあり、そのクローンを譲り受けたそうです。
なんだか今となってはDRC社に訴えられそうな話ですが、
その盗まれたロマネ・コンティの穂木から、接ぎ木によって作られ続けているクローンはエイブルクローンと呼ばれ、今ではニュージーランドではよく用いられるピノ・ノワールのクローンとなりました。
1980年創立のアタランギ・ヴィンヤードには、
最も古いエイブルクローンが植えられているということになります。
ちなみに、エイブルクローンがDRC社のロマネ・コンティ由来ということは特にこちらから質問しない限りは説明されません。なんとなく納得。
こんな感じで畑で話を聞いた後、テイスティング・ルームに行きます。
しっかりとしたシーティング形式で、グラスもテイスティンググラスではなく、
白ワイン用とピノ・ノワール専用のグラスが2つ用意されていました。
「ピノ・グリ」「シャルドネ」「クリムゾン」「ピノ・ノワール」「セレブレ」の全5種類を試飲。「セレブレ」だけがブレンド・ワインです。
「クリムゾン」はアタランギの言わばセカンド・ラインのピノ・ノワールで、
「アタランギ・ヴィンヤード ピノ・ノワール」がファースト・ライン。
私はこの「クリムゾン」の大ファン。
ワイヘキのスーパーにもごく稀に入荷してくるのですが、
見つけたら即買いしないとすぐに売り切れてしまいます。
セラードアーにまで行ったのにはいくつか理由がありますが、
まだ輸送ダメージなどを受けない蔵出しワインを試飲することで本来の味を知っておけること、そしてセラードアー価格を把握しておくこと、以上2点が主な理由です。
それぞれ自分なりに確認することが出来たので、
以前に利用したネット・ショップで信頼して買うことができそうです。
いろいろセラードアーを回りましたが、
こんなにパーフェクトで良心的な価格設定をしているのは、
おそらくニュージーランド北島のヴィンヤードではアタランギだけでしょう。
ぜひ、セラードアーに行ってみることをお奨めいたします。