芹澤 絵美

2020 12 Oct

オーガニックワインについて考える

管理している畑の1つに、
有機栽培をしているオーガニック・ヴィンヤードがあります。

初めて聞いた時には、
「わぁ、オーガニック・ヴィンヤードを見るのは初めて〜」
とワクワクしたのですが、
実際に1年近く手入れをして感じたのは、
人手(つまりお金)をかけてきちんと管理出来ないのであれば、
オーガニック栽培を諦めて欲しいなぁ、ということでした。

ヴィンヤード管理は、
予算によって管理の程度と頻度が変わってきます。

この国の農業はほとんど時給制です。
月給制ではないので、人数と時間でどんどんお金がかかっていきます。
なので、予算が無い畑は、その予算に応じた最低限の手間しかかけられません。

除草剤を使わないということは、
通路や木と木の間は芝刈り機を使って管理出来ますが、
一番大事なブドウの木の回りは手作業となります。

10本20本であれば毎日手塩にかけて雑草抜きが出来るかもしれませんが、
1000本近く植えてある急坂の畑を完璧に管理するには、
春から秋までは最低でも1週間に一度は草むしりをする必要があります。
それをこなすには何十人ものスタッフが必要です。

その人手を割く予算が無いと、
ブドウの木の周囲は恐ろしいほどのジャングルに。。。


蔓性植物に絡まれたり、
ギザギザした葉や鋭いトゲを持った植物に覆われると、
ブドウの木に近づくのも困難になります。

ブドウの木の根元から生えてくるシュートを間引かなくてはいけないときなど、
幹の周りのこれら雑草をかき分けなければならないのですが、
その際に、野バラやゴースなど、刺のある植物で手を傷つけてしまいます。

そして、植えたばかりのベイビー・ヴァインもあっという間に草に埋まり、
苗木を探し出すことさえ難しいです。


このような草に覆われていると、
そこは新芽を蝕むカタツムリやナメクジの温床となります。

幹の周りを草に覆われているだけで、
湿度がたまりブドウの木が病気にかかりやすいです。

雑草の管理が出来ないということは、
木が健康に育つことが出来ずに、ブドウの収量も落ちます。
そして、実際に畑で働く私からすると、
刺を持つ危険な植物で手を傷つけるリスクが多くなるので、
ワーカーの労働環境での安全面という点でも、
正直、その信念を貫きとおすのはエゴに感じます。

もちろん、無理にやらされているわけでは無いので、
必要以上の時間をかけたり、リスクを侵してまでやる必要は無いと言われています。
なので、手の施しようのないブドウの木は出来る限りの管理で対応しているのですが、
完璧に管理されている健康で幸せなブドウの木と比べると、
このオーガニック・ヴィンヤードのブドウ達がとても可哀想な気持ちになります。

畑の場所にもよると思いますが、
ことこの畑に限っては、周囲が鬱蒼とした森なので、
ただの雑草では無い、もはや木レベルのものが沢山生えてくる確率が高いです。
こういう場所ではオーガニック・ヴィンヤードではなく、
除草剤での管理を考えたほうがいいのではないかと個人的に思いました。
ブドウの木や、ワーカーの安全の為にも。

なので、オーガニック・ワインを飲む時にはついついそのブドウが作られた畑に思いを馳せてしまいます。環境に配慮して有機栽培にこだわっているのならば、ブドウの木や働く人の環境もハッピーだといいなぁと。

 

<↓ 雑草がしっかり管理されていて働きやすいヴィンヤード>