芹澤 絵美
まだまだ先が長そう
9月25日、アリゾナ州マリコパ群の米大統領選2020の監査報告会が行われました。
日本では産経新聞が「監査の結果、バイデン大統領の勝利」という記事を掲載していました。
この選挙監査で票がひっくり返り、トランプ大統領が勝利していた!
という結果を期待していた多くのトランプ支持者はさぞがっかりしたことと思います。
私もです。
それはおそらく、
「バイデン陣営及び米民主党が不正選挙を行っていた」という思い込みから来るものであり、
トランプ大統領が負けた州ではすべて不正があった、と決めつけていたからだと思います。
けれど、3時間超の報告会の動画を見れば一目瞭然ですが、
今回のマリコパ群の監査の一番の成課は、
・監査が公正であったことを世界に示せた
・右派の為でもなく、左派の為でもなく、全てのアメリカの有権者の為に、現行選挙制度の問題点を明らかにしたこと
の2点だと思います。
報告会では、監査結果を分析した博士や専門家が順番に登場し解説していきます。
最初の一人目はシヴァ博士で、郵便投票用紙の署名についての報告でした。
・郵便投票用紙の署名は監査の信頼性担保に重要であること
・郵便投票における、署名検証過程の検証可能性に異常なほどの疑問点があがったこと
シヴァ博士(右下の青いスーツの男性)の解説によると、
まったく同じ署名が2回〜4回重複している投票用紙が合計で34,448票あったそうです。
中には同じ落書き署名も3回重複している投票用紙があり、コピーされた票の疑いがあります。
これら無効投票用紙は、トランプ票、バイデン票共に大きな偏り無く投票されており、
無効投票用紙を全て除いた最終集計ではトランプ票ではなくバイデン票が増えました。
報告会は、
シヴァ博士の後に、監査を指揮したCyber Ninjasのダグ・ローガン氏が監査方法や投票用紙のセキュリティなどを細かく説明しました。電子顕微鏡を使った投票用紙の読み取り及びデータ化、140テラバイトに上るデータがインターネットに繋がっていないハードディスクに保存されていることなど。
3人目は、ベン・コットン氏で、ドミニオン集計マシーンの監査についての報告でした。まず最初に監査すべき項目を挙げ、その監査に必要だけれど提出されなかったデバイスやラップトップ及びデータなどの解説、集計マシーンのサイバーセキュリティ関連の問題点、24ヶ月のデータ保全義務に違反して削除された20万件前後のファイルがあること、削除した人物がセキュリティカメラに写っており人物特定が出来ていること、セキュリティ・ログが選挙日とその翌日分が消され、上書きされていたこと、選挙前日にインターネットに繋がっていた集計機があったことなどの説明がありました。
前述した通り、マリコパ群においては手作業での集計結果と集計マシーンの集計結果に大きな差異はありませんでしたが、集計マシーンの監査で上記問題点が多く見つかったことから、他州でエラーや外部からのアクセスが全くなかったとは言い切れいことが明らかになりました。
今回のマリコパ群での監査結果についての論点は、
「どちらがより多く得票していたか、どちらが勝利していたか」ではなく、
「投票用紙そのものに無効票が多数混ざっていた」という点をどうすべきか?
ということです。
例えて言うなら、
銀行業務が終了した後の資金の照合をする際に、
とある支店で偽札が見つかり全行に偽札が混ざっている可能性が出たが、それをそのまま計上するかきちんと監査して取り除くか、という感じです。
今までの米大統領選は、そのような票が混ざったまま集計されており、
そのような状況で得た選挙結果に果たして正当性があると言い切れるのか?
さらには、この問題点を抱えたままの現行選挙制度で今後の選挙の信頼性を担保できるのか?
という問題が公に議論のテーブルの上にあげられたのです。
選挙結果認証を取り消しし全米全州で監査を行うべき、という声も上がってきています。
トランプ大統領は「有効票のみカウントすべきだ。それで負けていれば受け入れる」と何度も言っていました。その上で「I WON」と言っていたわけですが、実際にはどちらが勝利していたのか全州を監査してみないと正確には分からない、ということが今回の監査で明らかにされたのです。
監査報告会では、問題点と改善点がそれぞれのプレゼンテーターから行われました。
それを見ていると、日本の選挙では当たり前のことがいかに行えていなかったかよく分かります。
私個人の感想としては、
「あ、うまいことやったな」という感じです。
なぜ不正が少ない方に入るアリゾナ州マリコパ群が監査に選ばれたのかずっと分かりませんでしたが、バイデン票の方が多かったという結果を得て「監査はトランプ支持者の為に行われたわけではなく、バイデン支持者を含む全てのアメリカ人の為に行われたもの」という、監査そのものの公平性、信頼性をまず1発目でアピールし、その後集計結果がひっくり返る可能性が大いにある州の大きな群の監査に移れば「監査そのものが疑わしい」という水掛け論を避けることが出来ます。
この監査報告会の後、テキサス州のアボット知事は、
テキサス州の大きな4群で監査を行うことを正式発表しました。
さてどうなるでしょう?
選挙制度が穴だらけだと大変ですね。まだまだ先が長そうです。
*報告会フル動画「Arizona Audit report presentation, Cyber Ninjas share their results of election audit」
*報告会の内容を分かりやすく説明してくれているHarano Timesさんの動画