芹澤 絵美

2019 26 Aug

除草剤と私

さて、春真っ盛りで一年に一度の楽しみ、
ニュージーランド・クレマチスの花が楽しめる季節となってきました。

「ワイルド・クレマチス」とも呼ばれ、
ニュージーランド固有の野生のクレマチスが美しい白い花を咲かせています。

愛犬ヒメの散歩によく行く公園、Te Toki Reserve(テ・トキ・リザーブ)は、
こういったネイティブ・プランツを守る為に定期的に外来種の除草を行っています。

ワイルド・クレマチスは蔓性植物なのですが、
同じ蔓性の外来種と見間違われて駆除してしまわないように見極めが必要です。
 

<クレマチスの葉>


<外来種ハニー・サックルの葉>

<外来種モス・プランツの葉>

ワイルド・クレマチスは固有種というだけでなく、
他の外来種のように樹木に巻き付かず侵略性が弱い植物なので、
他の樹木にも比較的優しいのです。

<木に巻き付かず伸びているクレマチスの蔓>

<木に乗っている感じのクレマチス>

ワイルド・クレマチスは近くの木にしがみつく為に一時的に短い蔓を巻き付かせますが、
その短い蔓は毎年枯れ、巻き付き性の無い蔓だけを残しているのです。

それに比べて、外来種のモス・プランツやハニー・サックルに巻き付かれると、
枝や幹を締め付け樹木そのものを枯らしてしまいます。

これら外来種をターゲットに除草剤をかけ、地道に撲滅プログラムが進行しています。

<除草剤をかけ枯らせ木から剥がしたハニー・サックルの蔓>

<蔓性植物に巻き付かれたまま立ち枯れ白骨化したカヌカの木>

<現在進行形でハニー・サックルの蔓に侵略を受けている木>

<今年植樹したばかりのネイティブ・ツリーに忍び寄るハニー・サックル>

これら蔓性雑草の勢いと繁殖力は凄まじく、
除草剤をもってしても一進一退の攻防が続いています。

そして、我が家の敷地内もこれら蔓性植物に侵略されていて、
私もつい数ヶ月前から全面駆除に乗り出しました。

<一番繁殖しているアスパラガス・ウィード>

<除草剤をかけたあとのアスパラガス・ウィード>

当初は蔓をカマで切っているだけだったのですが、
数ヶ月もすると元通りかそれ以上になっているので、
根まで殺す除草剤が必須アイテムになりました。

除草剤で根まで殺してからウィード・イーター(草刈り機)で粉々にする、
という手順で次々とやっつけていきます。
 

<除草剤3回スプレーしないと駆除出来ない最強蔓性植物、羽衣ジャスミン>

 

<激しく巻き付いた蔓から解放された木々達>

<でもその根元にはもう新しい芽が出始めている。近々除草剤散布予定>

<こういう状態の木々を救い出していきます>

<写真左半分は駆除済み、右半分は駆除前>

これら蔓性雑草に巻き付かれると、
新芽の成長を阻害し、枝を大きく広げて伸ばすことが出来ず、
最悪の場合、幼木などは蔓に引っ張られて幹そのものが曲がってしまいます。

<蔓に覆われていたのをすべて取り除いてあげた後の樹木>

<まだまだ果てしなく広がる蔓性雑草>

<蔓性雑草を丁寧に除去すると、下にはネイティブ・ツリーの幼木が>

上の写真は、私が重点的に増やそうとしているタライレの幼木です。

そして、蔓性外来雑草にまぎれてワイルド・クレマチスを見つけたら保護しています。

この蔓性雑草の除去に除草剤はかかせません。

近年たびたび問題視されている「ラウンドアップ」ですが、
一度私も使いましたが効き目が弱く雑草駆除出来なかったので、
もっと強力な他社製品の除草剤(ニュージーランド製)を今は使用しています。

「ラウンドアップ」が告訴された要因が、
主成分であるグリホサートに発がん性があるとのことですが、
この成分はモンサント社の特許はとっくに切れていて、
各国メーカーがグリホサートを自社製品に使っています。

日本の大成農材の「サンフーロン」や、
アース製薬の「草消滅」でもグリホサートは主成分となっています。

そうなると、
人々が問題視しているのは「ラウンドアップ」だけなのか、
それとも世界各地各社で製造されている「除草剤全般」なのか、ちょっと謎です。

私も東京に住んでいて除草剤に縁の無かった頃は、
「ラウンド・アップがミツバチを減少させている」という話を信じていて、
除草剤は環境に良くない!と本当に思っていました(使ったこともないのに)。

ところがニュージーランドに移住してみて、
ヴィンヤードで大規模に除草剤を撒いてもその後もミツバチは元気に飛んでいるし、
除草剤を使った土にもミミズやその他微生物や昆虫がいるのをちゃんと見てきたし、
「ラウンドアップを使った土地は草木一本生えない」と聞いていたけれど、
1ヶ月後くらいには雑草だらけになってうんざりしているくらいです。

除草剤の成分は、散布され枯れた後の植物と一緒に土に残留していく、
という話も聞きましたが、詳しく調べてみると土壌分解され数ヶ月後には土壌バランスは散布前と同じ状態に戻っている、とのこと。

その後、他の雑草が生えないように、
芝生とクローバーの種を蒔きましたが問題無く発芽し元気に生えています。

そうやって必要に駆られて自分で使ってみて初めて、
実体験と噂はずいぶん違っていることを知りました。

そして思い当たったのは、種子の数の問題かな、ということです。

種子が飛散する範囲を超えて広範囲を徹底的に除草すればほぼ雑草は生えないと思うので、
それで「草木一本生えない土地」と言われているのかな?と想像しています。

うちの場合、両隣の土地に家が建っていないので激しく蔓性植物ジャングルです。

そこから風に乗って大量の種子が舞い落ちてくるので、
除草しても除草してもすぐに新芽が生えてきます。

<左:ハニー・サックル、右:アスパラガス・ウィード>


都会になると、ほとんどコンクリートに覆われていて、
そこに花が咲く前に除草剤を使えば、極端に種子の数が減り、
雑草でさえ生えるチャンスが低下します。

ミツバチの減少も、そうした雑草の減少と大きく関係していると思います。
ミツバチの大好きなワイルド・フラワーの種を蒔けば沢山やってきます。
除草剤がミツバチを減らしたのではなく、
雑草の減少がミツバチを減らしたのだと思っています。

除草剤を使わずとも、手作業で雑草を抜いている人もいると思います。
除草剤を使っても使わなくても、タンポポなどミツバチの好きな野草を除去せずに生やしておけばミツバチは増えていくのでは?と思います。

さらに、除草剤がそこに生えている樹木に大きな影響を与えていないことは、
除草剤が撒かれた土の上に生えているブドウの木から毎年ブドウを収穫しているから分かるし、
ブドウジュースの成分にグリホサートが残留するという話も当然聞かないです。

なので「ラウンドアップ騒動」は、
人々に目を付けられてしまった運の悪いプロダクトであり、
それを利用した和解金目的の訴訟の連発、というのが事の本質かなと思っています。

モンサント社(現バイエル社)は、遺伝子組み換え種子の会社でもあるので、
そっちの問題も相まって嫌われ者になってしまったのかもしれません。
モンサント社を買収したバイエル社は巨大製薬会社であり、
動物実験なども必要でしょうし、なんとなくうさん臭い、
とイメージされることも多々あるでしょう。

その”怪しい”をどうにか現実的な問題に結びつけて訴訟までこぎ着けたのが、
ラウンドアップの有害性と発癌性ということなのかもしれません。

癌は4人に1人がかかると言われている病気で、
グリホサートとの直接的因果関係を証明するのは難しいでしょう。
何か除草剤特有の疾患でも見つけない限りは。

というわけで、私は例え発癌しても現在使用中の除草剤の会社のせいにはしません。
手荒れ肌荒れが起きたとしても使用法や風向きを無視した私の責任でしょう。
今のところは何も問題無いです。

キッチンにある漂白剤でも用法用量を守らなければ有害となります。
除草剤もそれと同じかな、と私は考えています。

もちろん、使いたくない人、
ましてや使う必要の無い人にまで除草剤の利点をごり押しはしません。

いずれにしても、気持ち良く蔓性植物を殲滅してくれる除草剤が今の私には必要です。
外来種駆除&ネイティブ・ツリーの保全には欠かせないアイテムなのです。

そしてなにより、
蔓性外来種が一掃された風通しの良い美しい森が早く見たいです。
弱肉強食という自然の摂理に逆らった偏った保護と言われるかもしれませんが、
ニュージーランド・クレマチスがネイティブ・ツリーと寄り添いながら、
美しい花を咲かせる森にしたいです。