山中 健
ラグジュアリーとサステナブルの関係性を考える展覧会「Fashion & Biodiversity」
2021年11月26日から28日に開催しているケリンググループ(グッチやバレンシアガ、サンローランなどを擁するコングロマリット)の展覧会「Fashion & Biodiversity」。展示を見ながら、現在のファッションと環境の関係性を学ぶというもの。前日に行われた内見会に行ってまいりました。
会場は表参道沿いにあるケリングジャパン本社ビルの上層階。表参道を含む東京の景色を見渡せる明るいスペースに展示を設置しています。表参道のケヤキ並木から想起したというルートデザインに沿って「ファッションのルーツ」「現在の危機」「自然への影響」「自然への影響の見える化」「ケリングの生物多様性戦略」「ケリング各ブランドの取り組み」「ケリングの約束」に触れ、学び、考えるというものです。
同展覧会は事前予約制で、全て定員に達したそうです。ただ、この展覧会に行かなくてもオンラインやアプリでケリンググループの環境への取り組みを知り、考える事はできます。その中興味を持ったのが「EP&L(環境損益計算)」というアプリ。各プロダクトの素材、生産地などにより環境負荷のレベルを確かめられるというもの。選択肢はケリングが把握できるものに限られているので、大衆的な素材などは含まれませんが、各素材や産地によって、大きく差が出るのがわかります。
例えばジャケットでは、モンゴルのカシミヤウール素材のものを選ぶのと、ニュージーランドのウール素材を選ぶのでは大きな差がでます。
写真:アプリ「EP&L」で計算した環境負荷レベル(左がニュージーランドのウール製、右がモンゴルのカシミヤ製)
ケリングの調査によると、ケリング事業のうち最も環境に負荷をかけているのが原材料の調達。なんと環境の負荷のうち65%が原材料の調達にかかる事でした。土地利用、温室効果、水質汚染は他のプロセスより圧倒的な負荷だったようです。
レジ袋の有料化や二次流通など、環境への問題意識が高まり、この問題を解決するビジネスが身近になってきました。今の消費者は自分が既に所有しているものをどのように処分するか、そしてどこまで長く使うかという事に意識が向いていますが、今後は販売しているアイテムや企業の取り組みに対して厳しい視線が向けられるでしょう。
これまで様々なトレンドを作り出し、心理的陳腐化による買い替え需要と廃棄を招いてきたラグジュアリーも今は変わっています。そのラグジュアリーをリードするケリンググループがどのような取り組みをしているかを知る事はとても大事なことだと思った次第です。
写真:ダメージのある中古品やアーミーブーツからつくられた「バレンシアガ」のアップサイクルジャケット
写真:最大77%を植物由来で作った非動物由来の素材「DEMETRA」の「グッチ」スニーカー
写真:過去のコレクションで使用した天然皮革を繊維状にして水溶性の融合材で化学繊維と混ぜてアップサイクルした「サンローラン」のサンセットバッグ
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