山田 晶子

2018 13 Dec

18FWファッショントレンドと社会潮流

【社会潮流】は、ファッションに示唆を与えてくれる・・・

ファッションの経糸は、【理念・思想・精神・美意識・・・】、緯糸が【社会潮流】という観点で進んできている当連載、しばらくお休みさせていただいておりましたが、そうこうしているうちに、18FWもシーズン終盤・・・社会潮流との関係性をまとめておきましょう!

 

■18FWの「時代の気分」

前回、

「18FWは90’sの影響を受けている」と言われている昨今、90’sには、どんなファッションシーンが展開されていたのか…との考察で、

①新世紀を迎える躍動感~「スポーツ」ファクター⇒「ナイキ」ブーム 

「スポーツ×テクノロジー」を背景に、いわゆるハイテクスニーカーがブームに。

 

②「混沌」に対して、襟を正したいきちんと感~「トラッドスタイル」ファクター⇒「Ralph Lauren」 ブーム 

マーケット背景からも、渋カジファッション、セレクトショップブームが後押し。「大人の紺ブレ」浮上。

 

③型にはまらない新しさを「模索」~「ミュージックシーン」ファクター⇒「グランジロック」ブーム~ 「グランジファッション」  

背景として、精神性を重視する、オルタナティブ(型にはまらない、もう一方の選択)志向→ミュージック/オルタナティブロックのひとつである「グランジ(薄汚い)ロック」からの「グランジファッション」

≪90’sのファッションシーンは①②、「オルタナティブ」を「型にはまらないスーパーリミックス」と捉えれば③も、まさに今現在、18FWファッションと呼応しています。何故なら、我々も現在、当時とは異なった質での≪模索と混沌≫の真っ只中に位置しているから…! 一方、そこには<サスティナビリティ>と<ダイバーシティ>と<テクノロジー>がクロスしているので、そう簡単に「90年代調がトレンドですね」などとは、言っていられないのも現実≫

とご紹介させていただいておりました。、

その背景・根拠となっているのは、筆者の仕事プロセスからで、シーズンごとに「時代の気分」をアウトプットしています。

毎シーズンものづくりが開始される約1年前に、直近の社会潮流から「生活者の気持ち」を表出させ、そのシーズンの「時代の気分」から、ファッションの役割をフォーカス、数々のキーワードから、当該シーズンの【時代の気分ムード&ファクター】を構築しており、そのプロセスを踏んで、昨年発信させていただいていた【2018FW時代の気分/ムード&ファクター】がこちらです。

20世紀の膿みとも言えるあらゆる出来事が天災・人災、政治経済の様々のシーンから溢れ出し、2020年という一つの節目も視野に入れつつ、「正解(あるべき方向、来たるべきもの)が見えない時代」故に、自分の日常=【今】にフォーカスして、

≪自分自身の最適な暮らし方に目覚めたい!気持ち≫

がベースとなっているシーズン。

それを未来への強さの原動力へと醸成・・・その時の【今】に柔軟に対応するため、学び、気づき、感じることで目覚めていく

今までの価値観(既成概念)を解き放ち「リアルな体験、夢の様な出来事から闇と光を紡いで、新たな価値を創造する」

これが「ファッションの役割」、これを「ファッションで表現」。まさに時代の気分は【覚醒】・・・意識を覚ますことでしょう!

 

以上は、「時代の気分」へのダイジェストとなりますが、上記のマトリックスの様に、未来への原動力となる「強さ」と「やさしさ」で、「光」と「闇」を紡いできた2018年FWシーズン。

図の各象限は、

Ⅰ.「エレガントな質実剛健さ」を表現

Ⅱ.和み感のあるFeminine&Fantasyな世界観を表現

Ⅲ.「継承された要素」の再構築により躍動感を表現

Ⅳ.「幻想的な世界観」を強さと美しさで表現

といった「装い」です。

各象限を具体的に紐解いていきますが、90’s以外にも、21世紀を迎え、1ディケードが過ぎようとしている2010FWシーズンに、今シーズンと非常に近い「時代の気分」が見受けられます。

 

■18FW 「覚醒」するファッショントレンド

Ⅰ.「エレガントな質実剛健さ」を表現

この象限は、< Darkness>< Genderful/Humanity > <Smoky><Soft> < Daily ><Facts><Elegant>等をキーワードに、「上質感」と「心地良さ」を追求し、「クリーン」「クレリカル」「アーキテクチャル」を意識しながら、DayTime と Night Time における現代女性の装いのムード&ファクターです。

18FWシーズン立上がりではトレンチ調デザインスカートが散見されていましたね。 2010FW Dories Van Notenのコレクションでは、トレンチ調デザインスカートを初めとした、「Darkness×Soft」なムードを持った「エレガントで質実剛健」な装いを展開していました。  また、同シーズンでは、Saint Laurentでは、クレリカル(聖職者的な)ルックが登場。Metropolitan Museumで、今年5~10月まで「Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination」が開催されていましたが、神と近距離に位置する人々の荘厳なテイストは、時代がファッションに求める凛々しいエレガントさ! 高い襟元やクラシカルな文様が台頭しているシーズンです。

https://www.vogue.co.jp/fashion

 

Ⅱ.和み感のあるFeminine&Fantasyな世界観を表現

この象限は、ソフトなフェミニンテイストをベースに、Warmingな素材感、ケミカルなハイブリッド感 等、様々な掛合せで、温かなFantasy感を表現しています。

2010FWでは、MiuMiuやChirisitian Diorが、warmな素材感に、ケミカルなハイブリッド感をアクセントとしてあしらい、「Brightness×Soft」な大人のファンタジー感で、温かな高揚感を醸し出しました。「フワフワモコモコ」は、マーケットでも健在ですね。

https://www.vogue.co.jp/fashion

 

Ⅲ.「継承された要素」の再構築により躍動感を表現

こちらの象限は、 継承された要素=「トラッド」 「スポーツ」「エスニック」等を中心に、カラー・素材・柄・フォルム・分量感で、《躍動》の体感を表現。マーケットでも、カラーチェックを筆頭に、様々なチェックヴァリエーションが台頭。スポーツ系の素材やディテール、エスニックディテールも登場、マインドアップする装いとして、18FWを牽引しました。

2010FWランウウェイでも、「大人のチェック」は多数登場していましたが、特にVivien Westwoodは、ストライプも取込みながら、デザインやコーディネートで再構成。「Brightness×Strong」なムード&ファクターで、大いなる躍動感を展開しています。

https://www.vogue.co.jp/fashion

 

Ⅳ.「幻想的な世界観」を強さと美しさで表現

第4の象限は、「不思議な既視感」を、カラー・素材・柄・フォルムにより、闇の強さから光へ向けて、マインドアップさせていく装いです。

2010FWでは、LanvinやPRADAが「Darkness×Strong」なムード&ファクターを展開。「眩惑的な美しさ」で魅了しています。18FWマーケットでは、まだ展開しきれていない部分もあり、19FWへエッセンスのひとつとして転移させていけますね。

https://www.vogue.co.jp/fashion

 

■社会潮流とファッショントレンドの関係性

90’sの社会潮流とファッショントレンドの関係性は、かなりメジャーに流通していましたが、まさにこの時期、2010年も、21世紀のひとつめのディケードを超えようとしつつ「模索と混沌」が、見え隠れしていました。

この年は、チリの大地震、アイスランドの火山噴火、モスクワの地下鉄爆破テロ等、世界的に天災、人災の頻度は高く、近隣では、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事故が勃発。バンクーバー冬季オリンピックやワールドカップアフリカ大会の開催で、スポーツマインドによる躍動感を抱きつつ・・・今また、2018FWの「時代の気分」は近似値となり、ファッションは必然として、人々のマインドアップをミッションとして携え、「覚醒」しました。

社会潮流とファッションの関係性を深掘りしていくことで、ブランドアイデンティティを時代の気分で表現でき、結果、オリジナリティへと結び付きます。

サラッと「18FWファッショントレンドと社会潮流」について共有させていただきましたが、プロセスやキーワードはさらに濃密な内容となっております。

既に19SS~19FWの「時代の気分」は、構築済みですが、ご興味を持っていただけた方は、ぜひご一緒に社会潮流の深掘りを! 

未来ファッションへの新たなリソースは、まだまだ眠っています。

では、また次回‼