内田 文雄

2021 15 Feb

或る中国ベッド関連企業のコロナ禍の取り組み!

以下、弊社クライアントでもある東莞にある中国No. 1のベッド関連企業の実話です。

 

日本のベッド業界の事は勉強不足も含め残念ながら知らないのですが、この東莞の企業は計7つのブランドを、全国に4,000店舗(1万人のスタッフ)もある店舗がショールーミング化されていて、店に来られたお客様に店内にディスプレーしているベッド、マット、枕、マッサージ機、などの商品特徴を説明し、マテリアル、サイズなどを細かなオーダーを受けて生産し、1ヶ月後には納品するといったビジネススタイルを取っています。

 

ベッドそのものは、アパレルとは全く違い、シーズン性が無く、買い回り期間も10数年に一度買い換えるかどうか?という商品ライフサイクルが非常に長い商品でもあります。

 

こんなアパレルとは全く違うビジネススタイルのベッド企業のコンサルティング指導を、3年に渡り弊社がやらせてもらっている理由は?

顧客視点、品質の良い物作りを行い、プロモーションを核に、商品を売り込んでいる、ユニクロのやり方を学びたい!というリクエストがこの企業の会長からあったから。最初はあまりにもアパレルとは商売の条件が違うため、取組みをさせてもらうかどうか?を相当悩みました。

 

何故なら、ユニクロやアパレルは最初にドーンと生産して、売り減らす商売、一方のベッドは上述の通りでリスク回避のためオーダーを受けての生産だから。もちろんベッドも原材料は備蓄しておくのでそのリスクは当然ながらありますが。

7つのベッドブランド、2つのソファブランドを擁する優良企業

全国に4,000店舗、1,000の加盟店、10,000人のスタッフが働くベッド関連企業

 

 

話がずれたので本題に戻します。

昨年2020年1月からの武漢から広がったコロナウィルスで、このベッド企業の全国の店舗も長い期間閉店休業を余儀なくされていました。各省、各都市の規制で人が外出することも禁じられていたのです。これでは何も身動きが取れずに、全国のスタッフ、加盟店、売上をどうするか?コロナの収束をずっと待つしか術が無かったのです。

 

そこでこの企業の会長は、昨年2月末に知人の中国で著名な経済評論家の呉晓波に電話を掛けて相談しました。「これまで我々は実店舗でしかベッドを販売していなかった、今全国で流行っているライブコマース(直播)で販売してはどうかと考えているが、呉さんはその可能性をどう思いますか?」と。

 

呉さんは旧い知人からの真剣な相談を受け「これまで店舗での接客でオーダーを取り、伸びてきた御社がやった事がないライブコマースでベッドを売るのは難しいのでは?外に出かける事ができない今現在、米や空気清浄機の販売や、ネット配信サイトを格安で見る事ができるんだったら、皆ライブコマースで買い物をするかも知れないが...」との返事だったようです。

 

会長はそのコメントを聞いて半ば諦めかけていたのですが、再度社内で協議し「こんな時だからやった事が無いことにチャレンジしてみよう!ダメだったら仕方が無い!」という事になり、すぐにライブコマースプラットフォームの専門家と短期間で販売システムを構築し、昨年3月中旬からライブコマースでオーダー取りをスタートさせました。

 

その後、僅か2週間で10万台のベッドが売れたようです。平均単価1台1万元(約15万円)として10万台、10億元(150億円)。販売する1台当たり1%(100元)を義援金として湖北省武漢の医療施設に寄付するといった、献身的なプロモーションを行いました。結果10万台を販売し、100元×10万台=1,000万元(1,5億元)の寄付を行いました。自らも先行き不透明な時期、世の中の皆が苦しい時に、このような発想ができることが素晴らしいと思います。

 

その後も昨年12月末までに10数回の大型ライブコマースを実施し、50万元(750億円)を売り上げ、結果的に12月末段階(僅か9ヶ月)で、何と2019年1年間の売上実績を超える数字を叩き出したのです。

 

この会長が昨年12月末に呉さんに伝えた3つの事が印象的でした。「コロナが無かったらライブコマースはやらなかった。ライブコマースプラットフォームが無かったらすぐにライブコマースをスタートできなかった。我々はコロナで考え方を変えた、もう後戻りはできない未来に向かって進むだけ」。

 

コロナが生んだ逆転の発想では無いですが、これまでのスタイルであるお客さんに店舗に来店して頂いてからの商売スタートという常識を、180度変えたやり方を実行したら、素晴らしい結果に繋がったという事例です。

 

経済評論家の呉さんが、今年2021年1月に行った「中国2020年振り返り」という、何百万人が見たライブ配信で、この事例を驚きと共に話をしていました。

 

それでは!