内田 文雄

2021 16 Feb

報道の仕方に温度差!

中国に長く住み、クライアントは100%中国アパレル、小売業をクライアント対象にしていると、日本企業や日本人と接触する機会が極端に減ります。

 

そしてこの1年間コロナ禍要因で日本にも帰っておらず、人(日本人)恋しさと日本語の会話をしたくて、たまに上海在住の知人日本人友達に会う程度で、ほとんどの時間を中国人、中国企業と過ごしています。

 

そうすると見えてくるのが、商談や普通の会話の中で日本アパレル、日本ブランドの話が一切出てこない事、仮に話に出てくるのは中国で絶好調のユニクロの話だけ、それ以外の日本のアパレルブランドの話は全く出ない。それくらいユニクロは中国人の生活に溶け込んでいるし、中国の業界関係者からすると勉強の意味でもウォッチしておきたいブランドなんだと思います。

 

逆に日本人で集まると、「最近どこどこの日本ブランドが売上好調みたい」「今のコロナ禍で勢いがあるのは凄い!」というような会話。こんな話を聞いて、いつも私は「井の中の蛙だなぁ」と思っています。このような「どこどこが凄い!」というのは、そこだけが切り取られて、日本のアパレル業界に広がっていきます。これは日本の報道の仕方にも問題有るのではないかと思えてなりません。

 

「どこどこのブランドは中国で絶好調!」「1日で幾ら売り上げた!」という伝わり方。でもそれは日本のアパレル業界内で盛り上がっているだけで、誤解を恐れずに書かせてもらうと、当たり前ですが中国の業界では1ミリも知らないということ。売上額や店舗数などから見れば中国アパレル、小売業と比較にすらならないのです。

 

もちろん、私も日本人なので日本ブランドには頑張って欲しいと思っていますが、たかだか数店舗の出店でさも中国ビジネスで成功したような強気のコメントを聞くと甚だ疑問だし、今後足元を救われないか?心配になります。中国でのビジネスはそんなに甘く無いですよ、流行りの周期も早いし、いま例え人気でも残念ながら長続きはしません、そんな事例を私自身は30年間見てきました。

写真は今回の記事内容とは関係ありません

 

SNSもなくKOLも無い90年代、私は前々職のアパレルで中国で直営、加盟店含め最終的に200店舗網の事業運営のど真ん中で仕事をしていました。ブランドローンチ当初は確かに絶好調で、上述のように日本の業界での報道は「●●は凄く売れている!」「●●は日本アパレルで初めて成功した企業!」というようなものばかりしたが、我々は全く違うことを考えていました。売上好調とかそこだけに着目して欲しいのではなく、如何に商品(服)を核心にして商売をしているか?そして如何に全国に加盟店を広げていっているのか?など事業の本質を深掘りし報道して欲しかったのです。

 

当たり前ですが店をオープンさせるのは難しいことでは有りませんし、数店舗規模ならそこに集中すれば良いだけなので、売上予算も達成できるし事業黒字化も可能ですが、重要なことはその後です。まず自らのブランド、商品を中国の消費者、デベロッパー、加盟店オーナーに理解してもらうか?如何にブランドのファンを増やしていくか?そしてリアル店舗運営部分では、すぐに辞めていくスタッフ、これら人材教育含め如何に事業を維持継続させていくことができるか?実はこれら多くの課題は、90年代も今も何も変わっていないのです。

 

大事なことは?「自分たちは何者で、中国ビジネスで何を達成したいのか?」です。それが無い限り一過性で流行っても中国でのビジネスは成功しないでしょう。

 

それでは!