生地 雅之
外商の次
最近、百貨店の外商売上が伸びています。コロナ禍で海外渡航禁止だったので、富裕層が海外でお金を使っていたのが内需に切り替わっていたのです。現在のインバウンドは韓国・台湾を始め、欧米に寄り掛かっているのです。特に台湾は中国が香港を手中にしたように、二の舞をしそうなので、日本の土地等を買いに来ている(行く行くは移住も?)のです。
中国も同様に北京のSKP(地元の中国人富裕層向け百貨店)などは同様に海外渡航禁止になっており、国内で落とすお金も多く、単店売上世界4位だったのが、ここ数年で大幅な伸びをしているのです。また中国で伸びているEC売上等は期待せず、地元北京の富裕層中心に買いに来られているので、店を磨く事以外は考えてもいないのです。
中国人も海外渡航禁止が解かれ、日本向けに船便や航空便も予約が入りだしており、5月頃からは過去の様な中国人のインバウンドが復活する模様なのです。これにより日本の百貨店は改革がまた止まるのです。過去に大手アパレルのTOPが開発した消化ビジネスに乗り、楽なリスクのないビジネスに乗っかってきたのです。
その漬けがコロナ下で露呈してきていたのですが、再びインバウンドの恩恵を受けて、改革の手は緩む事(改善はともかく改革等は)になるのです。小売業はローカライズ&カスタマイズしないと生き延びない業態であるにも関わらず、消化ビジネスからの脱却などは頭の片隅にもないのです。(判らないのでできない事と、自分の在任中はこのままで、リスクは踏みたくない)
百貨店のTOPに聞くと、経営と営業を分けて管理している百貨店は割と、TOPが将来を考え、専務営業本部長辺りが現場を守る方向に意識はあるのですが、特に現場は「外商の先」をどう考えているのか?営業本部長に聞くと、まだまだ外商売上が減少しても、外商の残ったパイプを太くする方向に向いており、外商強化からは逸脱出来ていないのです。
勿論、外商強化で喰えるのなら問題はないのですが、つまり、百貨店は売上の20%程度しかない外商に寄っかかり、外商売上が大半を占めるようになる戦略ならまだしも。果たして自立できない企業に将来はあるのでしょうか?営業部長クラス以上に営業利益額を考えさせ、売上がシュリンクしても儲けられるビジネス構築をさせるべきなのに、期待もしないで前年並みの売上を確保させれば、前年並の営業利益額を死守できるというシステムで保険をかけ、部下のアイデアに期待しない経営層が如何に多い事か?
確かに消化ビジネスでは「利は元にあり」ではなく、営業利益率が低いのです。百貨店が隣接している業態で自社事業のFBがあり、FBはテナントに場貸ししているので、「売上に関係なく、家賃のみの収入だから損はない」とのコメントもありましたが、業態自体の人件費比率は低く、家賃歩合も10~15%程度であり、百貨店アパレルに返品できて、また売上の35%も抜いていれば今後入るアパレルもなくなるのです
要は百貨店業態は人件費比率等の販売管理比が高いのですから、そこはリスクを勘案しながら、利益率の高いビジネスを目論み、他の事業で営業利益額を確保するビジネスの構築が必要なのです。電鉄系(首都圏私鉄9社平均)は小売事業が百貨店よりはましとは言え、2.5%強の営業利益率であり、デベロッパー事業は25%以上の営業利益率を誇っているのです。今後どちらに注力するかは「自明の理」なのです。
よって、百貨店業態の人件費比率が高いのなら、それでも儲かるビジネスモデルを構築しないと継続はあり得ないのです。または、百貨店事業自体の赤字を維持・縮小して、黒字になる人件費比率の低い事業の開発以外には道はありません。よって、3月6日にこのブログに掲載した「ワープ(ECとPB)」に繋がるのです。
現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。
是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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