生地 雅之
売らない店は売れない店のなれの果て?
最近、高島屋が、その前は大丸松坂屋百貨店やそごう・西武が、最初はマルイがベータとしてで「売らない」店を新宿マルイ本館の1Fに構築し、東京大丸は「ショールーミング化」と称してサンプルのみで、見た目とサイズ確認をした後に、その場でか、ご自宅からNETでのオーダーをしてお届けする仕組みを手掛け出しています。果たしてその手法が今後の百貨店を支えられるのでしょうか?
日本で開業するショールーム店舗は、なぜか「売らない」とか、「在庫を持たない」とか、「購入はオンラインで」、とか、小売業の「売る」という役割を放棄して、企業の都合を押し付けているように感じられます。実はその後には売っているのですが。小売業だから、シンプルに「売れば良い」だけなのではないでしょうか。
買った商品を「買った!」とワクワクして持って帰るのも、重要な顧客満足のひとつなのです。
その手法を取る百貨店の「能書き」はリアルで当然行われるべき内容であり、今回の「売らない店」で初めて出てきたコンセプトのように記載されていますが、リアルで出来ていない事象を新しい事業の名前にしたら急にできるのでしょうか?もっと既存での精度UPを望むものです。
小売業の原点は「お客様の必要とする商品(顕在需要のモノ・コト)をお客様にお伝えして購入して預く事」と、「お客様がご存じない素晴らしい商品(顕在需要のコト・モノ)を開発・発掘してお伝えする事により欲して頂き、購入して頂く事」に尽きるのです。小売業としては「お伝えする事」がキーワードなのです。この両方のバランスを自社・自店はどうするのかが問われているのです。
今回の「売らない店の能書き」はこの基本に忠実なので、今迄の既存事業で行われるべき内容ではないでしょうか?今迄出来ていない事が、新しいビジネスに見せる事で可能になるのでしょうか?5年後にはその事業が存続(継続)しているのでしょうか?サスティナビリティのような既に「勿体ない」と定着している事の再認識のためのネーミングならいざ知らず、「売らない店」とは「売れない店のなれの果て」にならないで預きたいと願ってやまないのです。
既存でやらなければならない事が出来ている(これ以上出来ない)ので、「藁をも掴む思いで」話題の新規事象に手を出しているだけではないでしょうか?もっと既存を精一杯やっていると思わずに、再度基本に忠実に見直す事から始めるべきではないのでしょうか?第三者から見るとまだまだ出来ているとは見受けられません。
確かに、既存のメンバーでこれ以上出来ないと認識する事は経営者としての現状認識としては正しいと思われますが、これ以上出来ない既存の人材に新しい事が成功させられるのでしょうか?甚だ疑問なのです。
新規事業に手を出す事を否定しているのではなく、出来る自社組織の構築の前の外部依存も正解なのですが、何時かは社内での内製化に向けた手順(外部委託の目線構築)の上に、外製化から入るべきではないでしょうか?
小職には不思議なのです。「目標設定(今までの営業利益率の最低2倍とか、営業利益額が全体の5%をクリアしたいとか、3年間で単年度黒字化してその後3年で累積赤字をクリアできて、それ以降は貯金になる等)し、その目標を設定・開示の上、達成(結果を出して)してから言ってください」と言いたいのです。
某シャツメーカーのSC内のオーダー店は、ゲージサンプルをふんだんに置き、お客様にご紹介し、そのものが必要ならその見本をその場でお持ち帰り頂き、お店がその商品を客注として自社にオーダーして見本として店頭に戻す対応をしている事をお聞きしました。要は如何に在庫をもたないでビジネスをすることを模索しているのですが、そのようなビジネスが継続している事はそうありえません。
経済の原則とも言われる「利は元にあり」(リスクのない処に利益はない)という言葉は嘘なのでしょうか?現在の営業利益率の低いビジネスは殆どリスクヘッジをしている事業ではないのでしょうか?確かにリスクは小さい方が良いのですが、研鑽の上最低限のリスクまで避けて通っている「漬け」が表面化してきていると思われるのですが、
ビジネスとは営業利益額・率の高いビジネスを広げ、営業利益額・率の低い事業の縮小しか企業の維持・存続はありえないのです。
確かに現在の百貨店は限定商品と先行発売しか売れていないのが実情なのですが、それだけの集積で全体の売上や利益が確保出来る事はありません。この「売らない店」を標榜するのは、小売業は「小売らない業」や「後で売る業」に改名すべきでは、また、このような事象で継続できるのなら、今迄はなんだったのか?
手を出した後に検証しない企業やマスコミが放置されるのはいかがなものか?消える時は自然消滅なのです。「結果検証のない新しいネーミングの事業の乱立」(やりっぱなし)がいつ終わるのでしょうか?
弊社のコンセプトでもある「お客様の立場でのプロの目線で商品や売場の課題を発見し、
プロの業で改善・改革策を提案」する業務なのですが、下記署名のURL(ブログ)にも気付きを散りばめています。
ヒントとお金は現場に落ちているのです。見つける目線(気付き)と拾う体力があれば大丈夫ですが、如何に身に着けるか?
現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。
是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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