生地 雅之

2021 09 Aug

百貨店外商強化の次は?

昨年3月より、コロナの影響で緊急事態宣言や蔓延防止策等、小売業のみでなく経済そのものが揺らいできています。昨年3月には百貨店も「猫も杓子もEC強化」に乗り出し、一番遠い施策に向かっていました。その時に小職は百貨店の得意分野である外商強化に目を向けて様々なメディアを使って、提言してきました。
主旨は過去にこのブログにも多く記載してきていますし、FASHION系業界紙や一般メディアのオンラインにも記載してきましたので、ご一読下さい。

百貨店の売上は、リアル(既存売場)約78%+外商売上約20%(呉服系百貨店の外商売上は30%強+電鉄系百貨店の外商売上は10%強)+EC売上約2%程度で成り立っており、すべて売場からの計上なのです。要は売場の販売員は売上の80%未満しか売場では売っていなく(外商マンの売上をサポートしている事を含む)、その他は他の手法に依存しているのです。

外商マンは売場の商品すべてを熟知している人はいなく、お客様から要望されたものや自ら売り込みたいモノのみは知識も持とうとされるのですが、店全体のすべての商品の把握などは出来ていないのです。某百貨店の全商品の把握というコンシェルジュ施策などは「絵にかいた餅」なのです。(置いている場所の認識位か?)

もう一つ、自店の売上をコロナは関係なく10% 程度押し上げようとすると、ECなら5倍、外商なら50%程度に相当するのです。勿論外商の50%UPが容易いと言っているのではなく、「どちらが」と言う意味なのです。顧客を把握度合いについても外商のお客様はある程度手の内にはいっており、EC客は顧客実態を把握できていないのが実情なのです。

また、百貨店売上の10%UPについては、難しいと考える向きも多いのですが、攻めなければ結果維持でさえままならないのです。百貨店マンにはROASを意識した前向きな姿勢を求めているのです。

百貨店の縦割りが相互補完を駄目にしているので、各パーツの責任者ではなく、営業本部長クラスが全体の10%UPを目指さないと、維持でさえとても不可能なのです。要は、自社ECの売上を5倍伸ばすには、他社のEC客を獲得すればよいのですが、他の百貨店のEC客の売上を獲得してもたかが知れている(10倍にはならない)のです。

よって、他社のリアル客を取得すれば自社客には影響しないのでよいのですが、実態は暖簾跨ぎ&チャネル跨ぎでありハードルが高く、自社リアル客の自社ECへの取り込み(暖簾慣れしている顧客)をメインに考え、そのリアルの穴を他社リアルから取り込みを考えないと全体の10%UP等は至難の業なのです。

勿論、百貨店客は全体では増加傾向にはなく減少傾向ですが、また百貨店客は暖簾にくっついているので、自店に鞍替えさせるのは大変ですが、上記理由から一番近い方策なのです。これを全体バランスで考えるのが、リアルも外商もECも管轄している営業本部長なのです。外商やECは別の管轄で責任者がいるから、などと言っている間TOTALのUPなどは「夢のまた夢」なのです。

要はTOTALで維持程度であれば、ECの投資赤で意味をなさないのです。百貨店の外商強化は上記本来の百貨店マスの復活を試み、それを回復させる時間を作るのに、外商強化が繋ぎ部分の一番の近道と申し上げているのです。20%程度しかない外商売上を2倍にしても全体の40%であり、半分にも満たないのです。

某百貨店のTOPが「百貨店ごっこはやらない」と明言していましたが、「百貨店ごっこもやれない」のです。営業のTOPが縦割りで、上記のリアル+外商+ECのバランスの変化に対応しながら、全体像を維持・増加させるべきなのに、ミドルの中の上層クラスでさえ、縦割りから逸脱出来ていないのです。

各パーツがそれなりに出来ればとのスタンスの様に見えているのは、本当に自社の全体を考えての事なのでしょうか?二つ目の事業も物販であれば、消化か委託か、はたまた家賃かであり、違う業種(例えば任天堂の様なコンテンツ開発)には手も出ていないのです。

話を戻して、外商と言えど百貨店売上の全体の20%程度しかなく、残りの80%部分のダメージをカバーするものではありません。本筋は百貨店が失いつつあるメイン顧客(百貨店マス)の復活を目指さなければ、到底カバーできものではありません。ビジネスの基本は「如何に少ない品番で、如何に高い利益を生むのか」がすべてなのです。

百貨店マスとはユニクロのような一般ベーシックではなく、百貨店層のベーシックなので、ターゲットは全く異なるのですが、百貨店はユニクロ等の台頭に押され、避けるように自店メイン層には目が向いていません。再度自社・自店のメインターゲットに向けての仕掛けこそ、これからの百貨店復興のカギを握るものと考えます。

このコロナも含め、経済環境の変化を見据え、自社・自店顧客のメインを再度見つめ直し、そこに向けた最善の施策を打たなければ、オーダー等のニッチな戦略のみでは生き延びる事は不可能です。百貨店のマスの商品を個別対応する事が必要であり、個のニーズに商品を併せる事ではビジネスになりえません。

小職の「外商強化策」も、将来に向けた「ECの強化」も本来百貨店の持つ強み(リアル)には勝てません。理由は緊急事態宣言が解除された後のリアル売上の復活とECの伸び率の鈍化を見る限り、同じものを時短で購入される人はECも継続されるでしょうが、百貨店での「買い物の楽しみ」を求めている人にはまだまだチャンスはあります。もっと「店での買い物の楽しみ」を商品を含めて、磨いて欲しいものです。

最近、TOPは現場に新しい事を提案するように求め、ROASも気にしないで、新しければ即OKを出し、ミドルやボトムによるROASも気にしない投資が五月雨状態です。最近話題のライブコマースでも5000万円程度(通常ライブコマースを実施している百貨店の売上の最高実績程度)売り上げたことがTOPの自慢であり、投資の50倍の売上を確保出来ている検証も出来ているとは思えない状況なのです。

とはいえ逆に経費の圧縮の指針をTOPが出しても、自店での優先順位も考えずに、素直に従うミドルも多く出てきています。ミドルは販管費予算の突出を管理しており、自社や自店が儲かっているかの経営判断が出来なくなっているのです。

TOPはミドルにはそこまで期待していないので、権限を与えなく、前年並みの業務さえできれば、前年並みの利益が確保できるというスタンスに見えるのです。

過去に某政党が地方に税金を配分し、地方毎の優先順位での使用を認めようとの施策が述べられていましたが、現実はここにこれだけ等、項目別の細かい指示のもとの税金の配分が続き、地方の方々のお困り事を優先的に、お役に立てられていなくなっているのです。

よって、予算配分は総額にして、使用方法は現場に任せ、TOPはミドルに対し、結果(利益)のみの評価にすべきではないでしょうか?経費予算がオーバーしてもそれに担う(それ以上)の利益を上げる判断の出来うるミドルが育ってほしいものです。勿論、結果責任はTOPもミドルも負うのですが、

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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