生地 雅之

2021 01 Nov

百貨店よ、お家騒動している暇はない

最近の百貨店の状況はコロナの前から斜陽産業と言われて久しいのです。
自らは動かず、リスクヘッジばかり考え、挑戦の「チ」の字のかけらも見当たりません。
昨年コロナが始まり、一番手の遠いECに猫も杓子も目が行き、自分の実力も弁えずに突入していたのです。「巣籠だからなのか?」そうであれば如何に短絡的なのか?ECは長い目では百貨店に必要なのですが、現在の優先順位は?結果が出せているなら問題もないのですが、
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その後の昨年4~5月(緊急事態宣言中で、百貨店が閉店)に熟慮の上、6~7月にマーケット調査(それまで百貨店外商ビジネスは素人でしたが、ビジネスは長さではなく深さなので課題も手の内に入れ、8月以降に小職として「外商強化」を喧伝し、9月以降サポートビジネスを立ち上げ、本年春から上顧客向け外商員セミナーサポートまでを立ち上げたのです。既存としては店頭売上大幅UPの売場構築サポートも併行して。

本年春に地方百貨店のTOPが数年前からの地方での外商ビジネスの成功事例(本筋は正解)をひっさげ凱旋され、本社のTOPにつき百貨店業界が「外商強化云々」と言い始めていて素晴らしいものです。いまや「猫も杓子も外商」なのです。本当にアイデアが無いとしか言いようもありません。このままでは各社埋没する以外に道はありません。

コロナ前の外商活動と現在の外商活動には違いがなく、リアルがNGだからEC売上や外商売上が引算式に伸びているだけなのです。暖簾跨ぎができなく、自店内でのチャネル跨ぎに過ぎないのです。元へ戻るのは明白なのです。本来、経済環境の変化に順応できる外商ビジネスに変化させないと、全く進歩がないのです。ここは各社どう見ているのか?聞きたい処です。結果が出てからで結構ですが、

過去に百貨店マンは椅子に接着剤が付いているという「言い得て妙」なコメントを出した知人もいらっしゃいますが、的を射ているといっても過言ではないでしょう。
百貨店をこのように見てみると、「我々は頑張っている」「出来る事はやっている」「新しい事にはチャレンジしている」と宣う人も多くいらっしゃるのです。しかし、結果は何も伴っていないのです。

ミドル(代表権のない取締役~部長以上)はともかく、トップ(代表権のある取締役)は結果がすべてなのですから、営業利益額を大企業クラスでは例えば最低500億円レベル(営業利益率も最低5%程度)は結果として出さないと前年より上回っている程度では「何をか言わんや」なのです。根本は以前から申し上げています「儲けるビジネスモデル」の構築がなされていない事に尽きるのです。

各社は今までのやり方からは逸脱できずに、リスクヘッジのみに奔走し、新しい事なら何でも挑戦し、偶然結果が出る事を待っているのです。「当たるも八卦、当たらぬも八卦」のような「鉛筆転がし」レベルなのです。儲かるか否かの目線が必要で、過去から申し上げています「今一度お客様(現場)を見る」から始めないと企業そのものの存続迄危ぶまれているのです。

このような環境の中、各社も幹部の中でさえ経営方針の考え方がばらばらであり、幹部各位が同方向に向いていない企業も多く見受けられるのです。そんな暇があるのでしょうか?
ここは会議が増えても(時間が無いのではなく優先事例)、企業VISIONの明確化、自社立ち位置の認識、その2つを結び、リスクの軽減をしながら、現状から直線で走る以外に道はありません。

一番欠けていると思われるのは現状の立ち位置の認識のブレなのです。第三者から見ても、、ここにいると思っていても、実は違う処に立っており、結果「良かれと進む方向や手法」が異なって結果が出ないのです。(このブログの過去に記載の「結果が出ないのは何故?」参照)各社VISIONは割と明確になっているのですし、この方向に走れとTOPが唱えれば、ミドルやボトム(部長未満のスタッフ)は十分に走ってくれるのです。

ここまで述べますと何が問題なのか見えてきます。要はトップ自らの研鑽が足りないのです。ミドルやボトムに責任を取らせるボトムアップでは何も解決しません。過去に某大手百貨店のトップにお聞きした話では「弊社は経営層がすべてを理解しないと判断・決断しない」と言われていましたが、現在その様には全く見受けられません。このような言葉のみで、実態は部下や外部に「丸投げ」が後を絶たないのです。

今後百貨店業界は10年の間で、大きな地殻変動(M&Aも)が最低2回は起きると公言しているのです。地方店どころか、池袋や新宿、梅田のような大型単店ベースのお話なのです。このままだと、6兆円がコロナで既に4兆円弱、それがいずれ2兆円にシュリンクしてくるのです。しかし、現在まだ4兆円弱はあるのです。小売り全体のシェアは低いのですが、4兆円弱も買って頂けるお客様がいらっしゃるのです。もっと大事にしないと、維持も不可能です。「誰も、何もしない」と、このまま低迷の一途に向くのみなのです。

それを阻止するには、リスク回避を第一義にしない(圧縮「企業としてのローコストオペレーション」は当然ですが)で、意思(WILL)を持って改革に臨む以外に道はありません.しかし、まずは既存を「改善で」最低限守る(考えて攻めて、考えて攻めて、考えて攻めまくり、初めて維持が出来る)事なのです。既存をミニマムまで追い詰め、利益額確保と、利益率を高める事に徹底して、その上での新規事業が必要なのです。「既存を精一杯やっているから、新規」にはNG(実は既存でさえできていないので)なのです。

上記リアルの売場構築サポートも、既存売場(什器も商品も販売員もそのままで)に手を入れると前年比が大幅にUPするのは何故なのでしょうか?「精一杯やっている・出来ている」と考えている事に問題が隠れている事に気づくべきでしょう。百貨店もまずは無人販売に売場を構築する事(何故かは別途)が大前提なのです。現状販売員の売場からの削減では、販売員が翌日休む前に売場を触って(自分・販売員が不在でも売上が0にならないように)帰る事も必要不可欠なのです。

また、小売業はデータは沢山保持できているのですが、解析力などに難があり、次の仕入れ等に全く役に立っていないのです。販売結果こそ財産であり、これにより効率の良い仕入れ(適量の把握による仕入量の適正化、消化率UPによる仕入率の改善等)既存の改善には大変な向きであり、何のために、どのようなデータが必要なのか?不足データは?AIを否定しているものではありませんが、過去のデータベースから今後の予測をする前に、やるべき事とは?

話を戻して、百貨店上層部の意見違いは一早く是正して一枚岩になり、この苦難を全力による一点突破をすべきなのです。要はトップの考え方が変わらなければ何も変わりません。
そこに気が付き行動に移せる企業を出てくる事を願うのみです。勢力争いをしている暇はありません。時間はもう限られている(お客様が百貨店に愛想をつかして全部離れていく前に)ので、「座して死を待つ」事にならないで預きたいものです。

前回(8月9日)の小職のブログのように「外商ビジネス」は重要ですが、本来の百貨店のリアルも含めた魅力を取り戻さなければ、百貨店の将来はありえません。近々には「百貨店の次の手」をどこかで提言予定ですが、
知見は売場と商品とお客様(3つともすべては考え方)にあります。真摯な姿勢で研鑽し、自らのレベルアップに向かって頂きたいものです。「自社・自分は出来ている」と考えると、それ以上の成長は「夢のまた夢」なのです。

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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