小島 健輔

2018 28 Mar

東京ミッドタウン日比谷は大判振る舞い

 明日29日に開業する「東京ミッドタウン日比谷」のプレス内覧会が先週、開催されたが、商業エリアの想像を超えた大判振る舞いには言葉を失った。
 延べ床面積18万9,000平米の大半がオフィスで商業エリアはB1〜7Fの1万8,000平米と一割にも届かず、しかも4〜5Fはシネマコンプレックス(TOHOシネマズ)、6〜7Fはレストランとビジネス交流拠点、B1は飲食サービス中心のフードアーケード、2〜3Fの半分はレストラン街、オフィスへのEVロビーや車寄せで賃貸面積が限られる1FもLEXUSのショールームが大面積を占めるなど、食品を除く物販店舗は全部で千坪強に限られる。
 その中も、2Fの「TATRAS&STRADA EST」、3Fの「HIBIYA CENTRAL MARKET」は200坪超の大型店舗だが、前者は在庫も薄いインポーター(ヤギ子会社のストラダエスト)のショールーム的展開、後者は有隣堂が手掛ける南貴之ディレクションの昭和レトロ趣味空間で、店舗で採算を採る意志は見えない。商売気満々なのはグループ会社がカフエの運営を受託し三越伊勢丹が趣味雑貨のセレクトにも関わる1Fの「LEXAS MEETS」に隣接する超大型旗艦店たる「イセタンミラー」ぐらいなものに見えてしまう。もちろん、投資と家賃に見合う商売に真剣に取り組む店が大半だろうが、目立つ大型店は家賃に見合う採算を考えていないのか、はたまたとんでもない低家賃で出店しているのかと訝られてしまう。
 業界の噂では大型テナントの家賃は相当に優遇されたと聞くが、そんな大判振る舞いが出来るのもオフィスで採算を採って商業エリアは客寄せと利便サービスに割り切ったからだろう。9割以上もオフィスが占めるコンプレックスを組めば、商業エリアでは意表を突く遊びも可能になる。そんな聡明なデベの一方で、中途半端に商業エリアを大きくしたために家賃水準が高くなってリーシングに苦闘するデベもある。
 都心の一等地ほどオフィス家賃の上昇が続いて水準が高く、一方で商業家賃は路面はともかく上層階になるとオフィス並みになりかねず(運営コストを考えればオフィスの方が採算が良い)、建築設計段階からのポートフォリオ戦略が明暗を分ける。「東京ミッドタウン日比谷」の大判振る舞いはデベの聡明な戦略が評価される一方、日頃テナント企業や商業デベと取り組んで、売れる店、採算の良い店、売れる構成、家賃の取れる構成を問われる立場としては考えさせられるものがあった。



     
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