小島 健輔

2017 27 Nov

衣料消費復活の夢は‘幻’だった!

 9月7日の当ブログ『ファッションは復活する!?』で6年振りのデザインと装飾の復活で衣料消費が底打ちするかも知れないと期待してみたが、秋商戦の結果を見る限り‘幻’に終わったようだ。
 全国百貨店売上総額はインバウンドの復活に押し上げられて8~9月こそプラスに転じたものの、10月は免税売上高が87.3%も伸びて総売上の6%を占めても国内顧客売上が4.7%減少して98.2と再び前年を割った。中でも足を引っ張ったのが5.3%も減少した婦人服・洋品で、0.4%減に踏み止まった紳士服・洋品とは好対照をなし、衣料品全体では4.3%減少して総額前年比を1.5ポイントも引き下げた。衣料消費は未だ底打ちしていないのが現実なのだ。
 衣料品は前年(16年)も大きく落としているため前々年比で見ると、紳士服・洋品が8~10月平均で93.4とヒト桁の落ち込みに踏み止まったのに対し、婦人服・洋品は同88.7と大きく落としており、その差は4.7ポイントも開いている。前々年からの減少額(年間)は紳士服・洋品の339.5億円に対して婦人服・洋品は1451.9億円と4.3倍近く、そこにこそ衣料不振の本質が潜んでいるように思われる。
 家計支出調査では紳士衣料の1.8倍弱の婦人衣料が百貨店では紳士衣料の三倍近い売場を占めて三倍強を売り上げており、婦人服が過大供給になっている事は間違いない。80年頃には1.7倍程度の差だったのが90年頃には2倍強になり90年代末には3倍にまで開いた経緯を振り返っても、消費の実勢を超えた拡大であった事が伺われる。
 それ以上に本質的な要因は『女性の労働力化による衣料消費の男性化』であった。女性(25~55才)の就業率は02年の63.9%から16年には73.9%と14年で10ポイントも高まったが、これと並行して女性のファッション意識は大きく‘男性化’して行ったと見られる。ファッションを楽しむという‘嗜好品’から多くの男性と同様に生活の‘必需品’として捉えるようになり、ファッション性より機能性や着回しの手軽さを志向するようになったのではないか。就業率の上昇に伴ってスカート比率が低下しパンツが主流となって行った事もそんな変化を伺わせる(95年にパンツがスカートを逆転し01年以降、差が開いて17年では3.3倍に広がっている)。
 女性のファッションが‘嗜好品’から‘必需品’へと変質するに連れ、付加価値が剥げ落ちて単価が下落し、買い替えサイクルも伸びて購入数量も減少して行ったと見るべきではないか。少子高齢化と社会負担増が進んで女性が労働力化していく中、女性衣料消費の男性化が進むのは必然で、百貨店の婦人服売場も遠からず紳士服売場の倍程度に圧縮され、紳士服の三倍近くもある婦人服ブランドも整理淘汰されざるを得ない。ギョーカイはそんな現実を直視しているのだろうか。

     
◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら