小島 健輔
スニーカー通りの次は神宮前小通り
上海発のストリートブランド「HIPANDA」の旗艦店が目と鼻の先の神宮前小通り(表参道ヒルズ裏通り)に開店したというので早速、覗いてみた。
表参道のポリスボックスと「ラルフローレン」の角を入ると突き当たりに「Onitsuka Tiger」「Onitsuka Tiger NIPPON MADE」が並び、角を右に曲がると「HIPANDA」のブラックアウトな三層ビルが嫌でも目に入る。その先に「イルビゾンテ」「Knot」「BAPE STORE」と続く神宮前小通りは「AAPE STORE」「SUPREME」などが店を構えるスニーカー通りに続く新手の裏ストリートとして注目される。
エナエル・ニコラ氏がデザインを監修したという「HIPANDA」は店内もブラックアウトかホワイトアウトで、3Dな映像投影も重なってデジタル空間に迷い込んだかのような目眩を感じる。専用アプリをダウンロードしたスマホをかざすと店内空間にオリジナルキャラクターのパンダが飛び交い、意表をつくインスタ写真が撮れる。EVホールは工事現場が演出されており、ブラックアウトされた階段室にはオブジェアートなマネキンが立つ。
そんな空間演出はともかく、商品はスロープで降りる半地下のグラウンドフロアとガラス張りの二階窓際にグラフィックプリントを施したTシャツやスウェットが申し訳程度に陳列されるだけで、インスタレーションアートのギャラリーかショールーミングストアのよう(そういう販売シスムではない)。スウェット単品ばかりでスタイリング提案やブランド世界の表現には遠く、「BAPE STORE」や「AAPE STORE」のような実売店舗とは性格が異なるようだ。
それはともかく、近年の原宿・表参道地区は表通りの賃料が高騰した割に売上は伸びず賃料負担が嵩み、「フォーエバー21」や「GAP」のように旗艦店を閉めたり賃下げ交渉するケースが増えている。その一方、キャットストリートやスニーカー通りは表通りに比べれば賃料水準がまだ低く、客層さえ合えば売上対比の賃料負担も低く抑えられる。外資ブランドも採算が厳しい表通りに拘らず、イメージと客層が合いそうな裏通りを物色している。
そんな中で脚光を浴びているのが神宮前小通りなのだが、商業地区は表参道から30mまでで、その裏手は第1種低層住居専用地域かつ第一種文教地区で用途規制も交通規制も厳しく、神宮前小通りより奥には広がりようがない。神宮前小通りとて物件は希少で、通学時間帯は通行規制も厳しくなる。「HIPANDA」は得難い希少物件を手にしたのだから、もう少し売る気を見せても良いのではないか。