小島 健輔

2019 01 May

思い込みの錯覚で暴走

     

 アクセルとブレーキを踏み違えたまま暴走して犠牲者を出す老人の悲劇が再三、報道されているが、別に老人に限ったことではないし、航空機の自動操縦でも企業の経営でもしばしば見られる錯覚行動だ。
 B737の自動操縦がパイロットの意思と相反して墜落事故が相次いだが、それは自動操縦システム導入初期にも見られたことで、85年のエアバスA300名古屋空港墜落事故はB737と逆に、操縦士が機首を下げようとしているのに自動操縦システムは上げようとして失速したことが要因だ。IT/AI流行りの昨今だが、どんな自動運転/運用システムもマニュアル操作をアルゴリズムに置き換えただけだから、想定していない事態が起こればシステムは判断を謝りかねないし、事態に対応しようとするマニュアル操作と逆行して悲劇を招くことがある。CPT制御による自動化は常にアナログ操作との一致を検証し、相反する場合はアナログ操作を優先するように設定すべきだ。
 企業経営でも思い込みで錯覚したまま暴走してマーケットとすれ違い、業績の暗転や経営破綻を招くのは珍しくなく、むしろ日常茶飯事に近い。
 ECプラットフォーマーのZOZOがコンテンツビジネスたるPBにのめり込み、実用性の疑わしいZOZOSUITに大枚を捨て、あまつさえ会員制常時値引きのZOZOARIGATOで出品アパレルの信頼を損ない、在庫を人質に取るフルフィル型サービスを強みと思い込んでC&Cを急ぐ有力アパレルの離反を招いているのは、まさしく錯覚によるすれ違いの悲劇そのものだ。
 思い込みで錯覚したままマーケットとすれ違い業績の悪化を招いたのはサマンサ・タバサも同様で、女性の戦力化で急減するモテ系OL(キュートエレガンス〜キュートモード)を追った拡大路線が破綻したのは必然だった。そんな錯覚が懸念されるのはライトオンもしまむらも大差ないし、GAPやH&Mももはや同類だ。ユニクロやZARAとて成功体験がもたらした錯覚による暴走をC&Cで制御するのに必死で、成熟先進国における発展性はもはや期待できない。
 一括調達量販型SPAの成功モデルは全て壁に当たったが、次世代のD2Cオンライン生産型SPAはアイテム特科から発展せざるを得ないから量販的なニーズへの対応には限界がある。第三世代は初めからC&CとD2Cオンライン生産を前提としたビジネスモデルになるだろうが・・・・ギョーカイは思い込みの錯覚から覚醒するのが先だと思う。
     
      
◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら