小島 健輔

2018 16 Oct

コンビニを弄ぶのは軽薄にすぎる

     
 藤原ヒロシの「ザ・コンビニ」は同氏のストリートなガジェット感を表現した面白い試みと評価できても、カルティエが釘をモチーフとした新作「ジュスト アンクル」のキャンペーンで9月21日から十日間限定で開いた「カルチエ」コンビニはスノブなお遊びが過ぎて反感を否めなかった。日本のコンビニが置かれたシリアスな状況を思えば、ボロ儲けしている高額ブランドの贅沢なプロモーションに玩具にされて良いとは到底思えない。

 コンビニの本部が売上を競ってFC店オーナーを過労死寸前まで追い詰め搾取する「小作人」状態はもちろん、かつてない人手不足でギリギリの運営を迫られるFC店で不当な労働を強いられ逸脱した責任まで問われるバイト労働者の「蟹工船」的惨状を知れば、贅沢なお遊びの「カルチエ」コンビニにミーハーに燥ぐのは憚られる。一円十円に神経を擦り減らすコンビニの悲惨な世界を豪華絢爛に弄ぶスノビティは、ブランドビジネスとファッションメディアのデリカシーの欠落を露呈したのではないか。

 ブランドビジネスが生産委託工場の不当労働行為や人権侵害を問われる昨今、直接契約して運営を統括するFC店で蔓延する悲惨な労働状況を放置して収奪を続けるコンビニ本社の反社会性は許容されるべきではない。心ある方は『コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実』『コンビニ店長の残酷日記』『セブンイレブンの罠』・・・・・など是非ともご一読いただきたい。「反社会的な企業」とは暴力団関係ばかりでないことが解ると思う。そんなコンビニを弄ぶのも「反社会的」行為ではないのか。