小島 健輔
AIベンチャーの9割は詐欺?
もとよりITベンチャーの離陸率は1割に満たないが、離陸に成功してイグジットできれば投資が数百倍数千倍になって返ってくるという“神話”が確立されて久しい。私の周囲にも、それで数億円から数百億円を手にした人が何人もいるから、あながち“神話”でもないのだろう。ちなみに、それらの多くはEC関連やフィンテック系だった。
ITベンチャーには時代の波があり、90年代末期のITブームと00年代に入っての劇的崩壊は記憶に新しいし、その後もECやフィンテックで一山あった。それに続く最先端の波がAIだが、技術は注目されても事業としての離陸は怪しい話が多い。
前世紀に確立されたメカトロを大企業がIoT化する(デジタルでネットワークする)にもシステム連携の「バベルの塔」など障壁が付きまとうのに、未だアナログで運営されている分野を中小企業がIoT化するには経営陣のリテラシーや通信インフラから壁に当たってしまう。
メカトロで確立された技術のデジタル化やAI化は採算が見える“現実”だが、アナログなままの技術を一足飛びにAI化するのは物理的なプロセスをアルゴリズムに組むという技術的障壁はもちろん、実用精度が確立されたとしても採算の壁がたちはだかる。技術が開く新規需要のマーケティング(販売手法や課金方法、市場規模と占拠率の予測)が蔑ろにされたまま、関係者が夢に酔って暴走してしまうのが典型的なパターンだ。破綻したランドロイドやドブ金になったゾゾスーツなどマーケティング軽視の最たるものだろう。
アパレル関連でもAIベンチャーが雨後のタケノコのように氾濫しているが、実用性も採算性も読めているレコメンドやエントリー(AI接客もその一種)、RFID系を除けば、技術先行で実用性が疑わしいものが少なくない。とりわけ画像解析採寸系には??と思わせるものが多い。資金に余裕のないアパレル企業がそんな危なっかしいものに大枚を投じる姿はメディア受けを狙ったスタンドプレイにしか見えず、そんな金があったら長年放置されてきたアナログ段階の課題を解決すべきだと思うが(そうしないとデジタル化もAI化も進まない)、夢に酔いたがる業界体質なのだろうか。
そんな疑念が膨らむ中、某最高学府でAIベンチャーを担う若手博士と議論する機会があったが、『AIベンチャーの9割は詐欺ですよ』という博士の本音を聞いて腹に落ちた。そこまではともかく、9割は資本取り込み詐欺か技術を弄ぶオモチャなのだと冷静に見極めるべきだろう。
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