小島 健輔

2019 18 Jun

女性下着の演出にはデリカシーが必要

     
 アパレルウェブに掲載されたトリンプの「天使のブラ」発売25周年イベントの写真を見て一瞬、こみ上げる不快感を飲み込んだ。写真のモデルさんたちが妙に生々しく、華やかなプロモーションの場には見えなかったからだ。
 モデルさんを使った下着のプロモーションはナマくならないよう、プロポーションを選び肌のコンディションに注意を払うものだが、この写真のモデルさんたちには違和感があった。現役のイメージガールはお一人だけで、4人は過去のイメージガールだったこともあると思うが(ボディラインと肌の締まりを保つのは大変)、ナマく見えてしまった最大の要因は照明だったと推察される。
 肌を締まって見せるには照明の陰影とテンション(ルーメン)が不可欠だが、おそらく会場の照明設備がランウェイショーに向いたタイプでなかったか、十分な照明機材を持ち込めなかったのだろう。現場を見たのではないから真偽のほどはわからないが、ネットに露出している写真はどれも同様に生々しいし、トルソーに着せられたブラの演色も明らかにくすんでいるから、撮影設定ではなく会場の照明が原因だと思われる。パーティなどに使うイベント会場は、よほど照明のプロが繊細に配慮して十分な機材を持ち込まないと、こんなミスマッチが起きてしまう。
 モールや路面に生々しい女性下着を張り出すように量販陳列する「アモスタイル」のVMD感覚には長年、疑問を持ってきたが、このイベント写真を見てトリンプさんのデリカシーへの疑念は一段と深まった。女性下着の演出にはエロスと洗練、ウェットなリアリティとドライな非現実感のバランスが問われるが、トリンプさんにはそんなデリカシーが欠けているのかもしれない。
 比較的お手頃な「トリンプ」に「ラペルラ」や「オーバドゥ」の洗練された演出を求めるのは酷なのかもしれないが、同様にお手頃な「ヴィクシー」のかつてのカタログ写真の洗練された表現や限界的な露出度のランジェリーショーを華やかに盛り上げる演出センスを思えば、このままで良いはずはあるまい。デリケートな日本女性の支持を広げるためにも、トリンプは変わるべきだと思う。
          

      
       
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