小島 健輔
やっぱり「しまむら」はZOZOTOWNから退店
「しまむら」が6月20日正午をもってZOZOTOWNから退店したそうだ。昨年7月に出店したばかりで、わずか一年足らずのZOZOデビューとなった。
ZOZOTOWNに出店した時は「しまむら」初のEC進出、それもZOZOTOWN出店ということでそれなりに注目を集め、ZOZOTOWNのイメージからかけ離れた「しまむら」ページの目を背けたくなるようなダサさが話題になったりもした。
一年足らずでZOZOTOWNを退店した今となっては、「しまむら」がZOZOTOWNに出店した18年7月2日の当ブログで『「しまむら」が形振り構わずECを始める訳』と題して『「しまむら」のECについては疑問に思うことばかりだ』『ZOZOに乗ってはバスにバスが乗るようなものでコストが合わない』と、早々に行き詰まると予見したことが思い出される。事実、今回の退店理由をしまむらの広報担当は『販売手数料がかかるため、コスト削減のために撤退した』と説明している。以下に当時のブログを引用するので、今一度、お目通しいただきたい。
■ZOZOに乗ってはバスにバスが乗るようなもの
まずは運営コストだが、ロードサイドのパート主体運営による金太郎飴的店舗展開で営業経費率が26.1%と極めて低いしまむらにとって、35%以上とみられるZOZOTOWNの売上手数料では大幅な採算割れになる。ZOZOTOWNに乗るメリットがあるのはオリジナルコンテンツを高コストなテナント店舗や百貨店で販売するSPAチェーンやブランドメーカーであって、ロードサイド中心に低コスト運営する“プラットフォーマー”たるしまむらには何らメリットがない。
しまむらは他者コンテンツを乗せて低コストに販売する“プラットフォーマー”であり、ZOZOTOWNというECプラットフォームに乗ってはバスにバスが乗る屋上屋で、コンテンツ供給者にとっては二重に流通コストを負担させられるだけで何のメリットもない。自社運営ECで数百億円売らないと現状の店舗販売並みのコストには収まらないから、取りあえずお勉強がてらやってみようという域を出ない。
■在庫と顧客の裏付けも怪しい
ECビジネスの要は品揃えの巾と在庫の確保、それもノーリスクの在庫預りによるプラットフォームビジネスか受注先行の無在庫販売D2Cビジネスでないと旨味がないが、しまむらのやり方はどれも外している。
元よりしまむらはDCに補給用の在庫を残さないTC(トランスファーセンター)経由の一蒔きディストリビューションで、店舗の在庫もまったく奥行きがないから、EC受注に引き当てる在庫が存在しない。ECを始めると言っても納入業者に在庫を持たせて客注的に引き当てる体制だから、品揃えの巾も奥行きもなく顧客に届く時間もかかる。これでは売上を伸ばしようもない・・・・・
そもそも「しまむら」は近隣日常消費を支える“ラスト・ワンマイル”の小売プラットフォーマーであり、コンビニにはない十分なスペースとフィッティングルーム、おまけに日本語を話す熟練したパートさんたちが揃っている。私の新著『店は生き残れるか』でも、一項を割いて『下手にECをやるより全てのEC事業者にとってラスト・ワンマイルのお試し受け取り拠点TBPPたるべきだ』と断じている。しまむらの現場を支える方々や取引先はもちろん経営陣にも是非、ご一読頂きたい。
◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら