小島 健輔
ブツリューくんの提案にいいね!
昨今は社員を踊らせたり業界都合の屁理屈を押し付けたりと一方通行な企業広告が氾濫して溝金な無駄遣いに鼻しらむ事が多いが、新年の企業広告に登場した「ブツリューくん」の提案には“いいね”をあげたくなった。
「ブツリューくん」は物流システムとマテハン機器(他にプラント事業なども)のトーヨーカネツ株式会社が創業75周年のキャンペーンマスコットとして15年に登場させたキャラクターで、16年の日経広告賞を受賞しLINEのスタンプにもなっている人気者だが、1月9日の日本経済新聞や日刊工業新聞に載せた広告では、ローラーコンベア上を流れるパッキンに乗った「ブツリューくん」が『取りに行かないピッキング』を提案して興味を惹いた。
B2Cの出荷工程では棚から人海戦術でピッキングする“摘み取り型”が主流で、ローラーコンベアやハンガーソーターで自動振り分けする“種蒔き型”は極めて例外的だ。“摘み取り型”は最新のロボットを導入しても人に置き換わるだけで処理能力が飛躍的に高まる訳ではないが(ルンバ型ロボットの活用は“ジョーク”に近い)、“種蒔き型”で自動化すれば処理能力は桁違いに高まる。それには荷主側の物流戦略を再構築する必要が在るにしても、マテハン機器によるオートピッキングを「ブツリューくん」が『取りに行かないピッキング』と笑顔で投げ掛けていた。
B2Cでも在庫を棚入れ備蓄せず一蒔きで出荷してしまう“直流物流”(TC)だと“種蒔き型”ピッキングが可能だが、在庫を棚入れして受注に対応する“交流物流”(DC)では非効率な“摘み取り型”でピッキングせざるを得ない。想像するに、マテハン機器によるオートピッキングと回転寿し型ローラーコンベア振り分けを連携するシステムなのだろうか。私もマテハンのプロではないから「ブツリューくん」に教えてもらいたいものだ。
それはともかく、物流システムとマテハン機器という縁の下の産業設備企業がこれほど親しまれるキャンペーンマスコットを確立出来たのは驚嘆に値する。ファッション屋さんのイメージ戦略って情報の非対称性(格好つけるクリエイション発信)ばかり追求して親しみを欠いてませんか!
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