小島 健輔
2018
17
Jul
AIと売場が見えない輩たち
「AIと教科書が読めない子供達」という学童教育関係の本が売れているそうだが、どんどん退化する我らギョーカイを見ていると「AIと売場が読めない輩たち」という本でも書きたくなる。
POS依存で売場が見えなくなり、数字だけでバーチャル管理する悪弊で消化歩留まりを悪化させ、さらにはアルゴリズムに頼って自分で考えられなくなり、果てはビッグデータやAIに依存してリアルを見ず思考停止してしまえば、システム投資だけ嵩んで得るものがなく失うものばかりだ。
キーボード入力に慣れて漢字のリアル感を失い、小学校で身につけたはずの書き順まで忘れ、いざ手書きしようとして失ったものに鄂然とするが、POS⇒アルゴリズム(チャットボット)⇒機械学習AIとどんどんリアルから離れバーチャル依存が高まる流通業界も失うものの大きさに気付いていない。POSやAIに任せるだけリアルが見えなくなり、売場と顧客を見る力量は加速度的に劣化していく。今世紀に入って以来、消化歩留まりが向上した小売企業がいったい何社あると言うのだろうか。こと衣料分野に関しては“ゼロ”と言い切ってもよいのではないか。
ハイテク装備の無人店舗が流行り(一時で廃れるでしょう)AI依存に陥れば、本部はますます現場を見なくなり、現場は考える能力を失い、組織はリアリティを失って行き詰まる。アーサーCクラークとスタンリー・キューブリックが1968年に「2001年宇宙の旅」で警鐘を鳴らし、ホーキング博士が『AIは人類を滅ぼす』と言い残したのに、文明は歯止めなき退化の罠に突っ走っている。「教科書が読めない子供達」でも読んで、『リアリティを失ったら結局は行き詰まる』という真理に気づいて欲しいものだ。