北村 禎宏

2020 27 Jun

ほっこり

週末でもあり、ほっこり系の話題をひとつ。

 我が家にはじめてオタマジャクシ君がやってきたのは10年前に遡る2010年6月26日のこと。水を張ったまま庭に常置している「じょうろ」に数十匹のオタマ達が泳いでいるのを発見。あまりにも小さい体なので、そのまま数日の間、様子を見て屋外水道のシンクに水を入れて引っ越し。

 青色と白色の二つのじょろに揃って登場したのだが、青いじょろの方が成長がはやく、白の方は、小さいだけでなく皮膚も色白。光という環境の違いが成長に甚大な影響を与えていることにびっくり。二三日遅れで白の方も移動完了。石を配置し、数日のうちには水苔がシンクや石に付着しはじめて、それを啄むオタマ達。

 手足も出ぬうちは、エサとして麩を粒子状に細かくして散布。水面を漂う麩をパクパクする姿は、それはもうかわいいもの。早熟の個体の足が出始めた頃には、鰹節をすりおろしてタンパク質の補給。
やがて手が出てカエルらしい姿になって石の上に鎮座するようになるものの、まだ尻尾が残っている。
尻尾が完全になくなるころには独り立ちを迎え、一匹そして二匹と生まれ育ったシンクからどこへともなく旅立っていく。

 最初の旅立ちまでが、およそ二か月弱。最後の固体がカエルになるまでさらに二~三週間。同じ卵から生まれたクラスターでも、それぞれに成長の早遅がプログラムされていることでリスクを分散して子孫が生き残る確率を最大化する自然のメカニズムに改めて驚嘆。

 その後数年のブランクがあったが、2017年から昨年までは三年連続でやってきてくれた。ブランク中は私たちの不注意で卵を水やりしてしまっていた怖れも否定できない。今年は在宅の機会が激増したので、今年こそ来て欲しいなと淡い期待を寄せていたところ…

 金曜日、しばらくぶりの複数の宿泊を伴う出張から戻り、家内から聞かされたときには、思わず“ほっこり”。今年は例年のじょろではなく、雨水が溜まっていたシンクに直接産卵されていた。

 鮭には生まれた川に産卵に戻る習性があるが、両生類であるカエルに生まれた場所に戻る習性があるというのは聞いたことがない。本来的住処は側溝の先にある安定的に水が溜まっている何処かであると想像するが、民家の庭先の偶発的水場に5回も来てくれたのは、最初こそ偶然であると考えられるが、二回目以降には必然性を強く感じさせられる。

 これからおよそ二か月半在宅の気がまぎれると思うと、久々に心が晴れやかな嬉しい週末を迎えることができた。小学生の夏休みの自由研究レベルのお話で申し訳なし。