北村 禎宏

2020 11 Feb

閉鎖空間の脅威

 大型クルーズ船での感染者は日に日に増加する一方だ。

 閉ざされた空間で過ごさなければならないストレスはいかばかりだろうかと。リタイヤ後のひとつの選択肢としてクルーズ旅行は頭の片隅にはなんとなくあったが、完全に消滅した。列車を舞台にしたミステリーは数多くあるが、私が知らないだけでクルーズ船での事件を扱うストーリも読みごたえがあるだろう。

 エネルギーの出入りを基準にして語ると、地球は太陽からエネルギーを得ているオープンシステムだが、当の太陽系は太陽のヘリウムと水素が燃え尽きたら消滅するクローズドシステムだ。宇宙全体がどのような系の下にあるかは、現代科学をしても未だ明らかではない。

 クルーズ船では水や食料は自足したり補給を受けることができているが、クスリの補給がままならないという。大災害時にも一時的に自宅や地域がクローズドシステムに陥る。フローが閉ざされてしまうとたちまち社会のシステムが頓挫する。

 余剰な中間在庫を極力もたない複雑なサプライチェーンは、たった一か所のボトルネックが詰まってしまうと機能しなくなる。パツパツの合理的なシステムも経済的には重要であるが、あくまでも平時においてそう言えるだけで、いざ有事となると逆機能を発揮しかねない。

 余剰ストックもバックアップもあながち悪くはなかろう。そこでやっぱり頭に浮かぶのは、それを人材にあてはめて考えることだ。私たちは何か違うことをしてしまっているのではと再考の余地がある施策が少なくないことだ。オープンシステムを担保するために機能している非正規雇用は現状では減ることはない。どのような雇用社会を目指すべきかは大きな課題である。