北村 禎宏

2019 30 Mar

新年度間近

 ついこの間2019年を迎えたと思ったら、早や新年度が目前だ。極めて現代的なコンテンツが3月に二件あった。

 ひとつは会議の生産性向上だ。働き方改革を掛け声だけに終わらせたくない真剣モードのクライアントが、昨年の部署長に引き続いて、今年は部署長と共通言語を有する仲間となって後押しする補佐役の人々を対象にしたものだった。

 アパレル業界が繊維ビジョンを通じて通産省から「経済の暗黒大陸」と揶揄されたのは90年代初頭のことだ。なにくそとこぞって発憤し、サプライチェーンの合理化に真正面から取り組んでSPA型ビジネスモデルに到達したのは立派なものだと言える。反面、行きすぎたデジタル化と52週MDや過度なODMへの依存など、リバウンドも激しいものがあった。「誰がアパレルを殺すのか」というピンク本が話題になったのは二年前だ。

 ジャパンアズナンバーワンとかメタルカラーの時代とか、製造現場が世界に冠たる生産性(コスト競争力と品質の両立)を獲得したことは歴史的事実に違いない。ところが、もっとも付加価値を生み出す可能性が高い「知的労働」の生産性は、暗黒大陸として取り残され、さらに中でもブラックボックス化して立ちはだかっているのが、おそらく会議というやつだ。

 くだらない会議はやめにして、必要な会議をまともに開催するだけで知的労働の生産性は飛躍的に向上することが期待される。会して議する。議して決する。決して行動する。行動してはじめて結果、成果に一歩近づくことができる。長い道のりである因果律の出発点となる重要なトリガーが会議なのだ。

 もうひとつは、新入社員を指導する立場の人々のトレーニングである。トレーナーとかチューターとか呼称は各社様々だが、各社真剣に取り組む姿勢が例年以上に強く感じられる。前職の会社ではFOI(フレッシュパーソン・オンザジョブ・インストラクター)という固有の呼称で、とても素晴らしい制度があった。自分が新人の時にも有り難かったし、数年後、役に立ったかどうかは別にして私もFOIをやらせていただいたことが思い出される。

 数年前まで、三年で三割が退職すると言われていたのが、三年で五割となるとこれはもう異常かつ緊急事態である。女房の取説も現代的課題だが、今時の若い人々の取説も改めて通読しない限り、自分のときの裏返しと自己流ではまったくもって歯が立たない。一刻も早い戦力化もさることながら、ぞれ以前の問題として“リテンション”に頭を悩ませている企業とビジネスパーソンは少なくないどころか、大多数であろう。

 迎える側のセットアップは今月完了したが、月が変わって果たして今年のルーキー達はどのような人々なのか。楽しみにして新年度を迎えるとするか。