北村 禎宏

2018 24 May

第二ハーフの生き方

 MBAの同窓生が念願の北陸移住を果たしたというので、金沢でその経緯とココロを拝聴してきた。

 観光業をフィールドに伝統旅館の後継者の人々のパラダイムシフトを支援すべく、リエゾン機能を発揮することを目指すという。リエゾン機能がピンとこない読者も多いと思うので、簡単に説明を施すことにする。始めてこの概念に接したのは、
前職における法務業務のボスがある契約を「リエゾン契約」と教えられたときだ。リエゾンとはフランス語で連声の一種とされる。発音されない語末の子音が直後に母音が続く場合に発音される現象を指す。

 総合商社出身の氏は様々な取り組みスキームを経験知としてストックしていたのであろう。その定義を親身に教えてもらった記憶はないが、単なる口ききでもなく、仲介でもなく、丁稚の使いとしてのクーリエ機能でもない、両者の間柄に質的変化をもたらすノード機能を果たすことだと自分なりに理解したことを覚えている。

 彼は私より二つ若いが、ほぼ同じ人生のステージを歩んでいるということができる。郡山史郎氏は45歳を境に人生をハーフを区切っているが、50歳代後半は
ビジネスキャリアのラストワンクォーターを控えた大事な最終コーナーだ。楠木新氏の「定年後」からも考えさせられる論点はたくさんある。

 個人にも会社にもライフサイクル上のステージがある。もっとも大きな違いは前者は一回限りのキャップ付きという制限があることに対し、後者はゴーイングコンサーンであることだ。生物学的に寿命に制約されている個人と、社会的に倒産という死を迎える可能性がある法人と。それらの狭間で私たちは日々邁進している。

 ひとつに事例や実例を豊富に提示することができる。ふたつに枠組みを用いて形式知化することができる。それが我々世代のバリューだと氏とは合意した。ファッション業界にとってはSSおよびAWのクリアランス前の品仕舞いはデリケートなオペレーションであるが、人にとっては人生の品仕舞いは最大の課題だと改めて考えさせられる一夜であった。