マサ 佐藤

2018 18 Oct

売上を分解するだけでも問題点は浮彫になる

★9月は軒並み数字は良好だった?

もう10月も半ばを過ぎ、秋を感じさせる気温になりました。9月の各アパレル小売業の売上をみると数字は軒並み良好だったようです。

以下の記事にもそのように書かれています。

 

”カジュアル衣料/9月の既存店ユニクロなど4社増。秋物好調”

https://www.ryutsuu.biz/sales/k101115.html

 

既存店売上が上がっている!というのはこの業界にとっても好ましい現状ではありますが、この数字は、今年の9月の月次売上だけを取り上げたものになるので、各組織がそれで本当に好調・復活したのかは、もっと数字を吟味してみなければなりません。

 

★記事の数字にキニナル点が...。

この記事の中で取り上げられている、マックハウス以外の4社は売上の既存店昨対が上がっています。しかし、気になる点も見えます。

ユニクロとUAは共に客数が伸びています。しかし、ライトオンとジーンズメイトは客数が昨年よりも減少しているという点です。

(ライトオン客数4%減。ジーンズメイト客数8.3%減)

 

既存店の客数が下がって、売上が上がっているということは、当然のことながら客単価が上昇しているということになります。客単価の上昇は悪いことではありません。しかしながら、MDとしての視点で見れば、既存店の客数減少=ファンの減少とも捉えることができ、注意が必要で手放しで喜ぶことはできません。

 

★売上を分解して考えると?

皆さんご存知の通り、売上は以下の数式に分解できます。

”(買上)客数×客単価”

です。更に言えば、(買上)客数は様々な形に分解できますが、以下の数式にもなります。

”来店数×購買率(ECで言えばコンバージョン(CVR))”

 

客数を上げようとすれば、来店を増やすか、商品の購買率を上げるかどちらかになります。

・来店を増やすには→プロモーション。VMD等の内的要因と気候。館自体の力。等の外的要因が考えられます。

その中でブランド・ショップが持つ知名度は一番の武器です。

・購買率を上げるには→価格の魅力。商品そのものの魅力。接客力を含めた販売力等のことが考えられます。

更に言えば、セールをして価格を下げれば、PRによる効果と価格の魅力が相まって、客数が大幅に伸びます。(昨今、効果は薄くなっている?)

 

客単価は以下の数式になります。

”1点単価×SET率”

です。客単価を上げるには、1点単価を上がるか?、SET率を上げればいいわけです。

・1点単価を上げるには→商品の値上げ。セールの抑制。等が考えられます。

・SET率を上げるには→接客力。魅力的なVMD。セールの実施によるまとめ買いの促進等が考えられます。

 

★上記の項目で、客単価増加を考えると?

仮にジーンズメイトとライトオンの両社がSET率で客単価が上がっているとしたら、店頭の販売員をまず褒めるべきです。

セールの実施でSET率が上がっているのだとしたら、粗利率が下がる傾向になる筈です。しかし、ジーンズメイト・ライトオン両社にそのような傾向は見られません。寧ろ昨年同時期に比べ上がっています。(ジーンズメイトは決算書によると、値入率が改善している部分も影響している)

 

ということは?今回の客単価の上昇はほぼ、1点単価の上昇と捉えて間違いのないところではないでしょうか?

商品の値上げを実施(MD改革で品揃えも変わった?)したか、セールの抑制でしょう。

 

仮に上記の推測が当たっていて、客単価の上昇が1点単価の上昇だとしたら、それは最早。組織的に赤信号に近い黄信号ではないでしょうか?

因みに、この記事に登場するライトオンは2012年を1と基準年にした場合。2017年時点で客単価が約6%上昇しています。上記の推測と店舗の販売標準を考えれば、当然客単価の上昇は1点単価の可能性が大です。

(グラフ見づらかったらすいませんm(__)m)

 

そしてグラフをご覧頂いてお解りの通り、ライトオンは客数の減少が売上の減少と比例しています。更に言えば、好調年だと言われていた2015年近辺も、2012年ベースでは客数は回復していませんし、2017年には客数が約80%まで減少しています。

 

これらのことを考えれば、この9月の1点単価上昇施策による客単価アップの売上改善は、組織として危険なかけにも見えますし、ここ数年でハードルが下がった客数の既存店昨対さえもクリアできていないということです。

ということは、今後、グラフの推移のように更なる客数の低下を招けば、再び既存店売上が下がる可能性が高いように感じます。

 

★客数をあげる施策を考え、品揃え政策の改善を実施しては?

上記で示したような現象はジーンズメイトも同じようなものです。しかも、ジーンズメイトはライトオン以上に既存店の客数の減少が著しく、売上が既存店昨対をクリアしているからといって、ショップとして本当に復活・改善できたのか?というと。疑問を感じざる得ません。

(ジーンズメイトに関しては、MD戦略自体を変えようとしているところもあり、過去の数字だけで判断できないところもある。)

 

この2つの組織が優先させるべき取り組みは、客数の既存店昨対をプラスに転じさせる施策です。

既存店客数アップの施策を各部署ごとに具体的に立てる。そして目標値を決め、速やかに実行すること。

そして、そのことに伴う、商品の品揃え政策・価格政策を、顧客の心理を考えながら具体的な施策をたて、速やかに実施することなのではないでしょうか?

 

最後に、この業界は目先の売上だけみてブランド・ショップの良し悪しを判断する傾向にあります。そのことによってミスリードも度々起きています。だからこそ、目先の売上だけをみて物事の良し悪しを判断するのではなく、売上という単純な数字でも分解し、問題点を浮き彫りにし、改善へと導く。このことが業界全体に求められているのではないでしょうか。

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