千金楽 健司

2025 05 Jun

『her/世界でひとつの彼女』が現実に!?

アメリカで「恋愛系」AIチャットボットサービスを運営するJoi AI社(“ライバルは出会い系アプリ!”と宣言している会社です)がZ世代を対象に行った調査結果が驚きの内容でした。

【調査概要(2025年4月実施)】

・対象
└10代半ばから20代後半のZ世代の若者2000人

・結果(抜粋)
└75%が「AIパートナーは人間の交友関係に完全に取って代わる可能性がある」と考えている
└83%が「チャットボットと有意義な関係を築くことができる」と考えている
└80%が「AIと結婚したい」と考えている

Joi AI社のサービス利用者が対象だと思うので、こうした結果がでることはある程度予想されていたとはいえ、ここまでの数字がでるとは…衝撃をうけました。
まさに、2013年の映画『her/世界でひとつの彼女』(https://www.asmik-ace.co.jp/works/1245)の世界です。

最近、日本国内でも「chatGPTに愚痴を聞いてもらったらすっきりした」というような話題があちこちで盛り上がっています。“ChatGPTに愚痴を話すときのプロンプト例”がまとめられたりしていますよね。

AIとの会話が心地よいのは、どんな会話をしても「共感してくれる(承認してくれる)」からです。「慰めてくれる」「励ましてくれる」「ほめてくれる」からです。現実の人間同士の交流では得られない、より強い満足する言葉をかけてくれます。その言葉・反応のおかげで、ストレスが減ったり、不安が軽減されて、日常生活がスムーズにすすむなら、それはAIをうまく活用しているということになると思います。

では逆にAIに依存しすぎてしまったらどうなるでしょう?

そもそもの話ですが、AIの回答はすべてが「正」ではないです。プロンプトを打ち込んだ人(ユーザー)にとって心地よい、正しい情報を機械的にはきだすという“設定”にそって、必要な情報を膨大なデータベースの中から選択し、アウトプットしてくれているだけです(膨大なデータベースの中には間違った情報や悪意のある情報も含まれています)。

また、SNSの利用によって、個人の思考に偏りが生じる「エコーチェンバー現象(自分に似た意見がたくさん表示される状態)」や「フィルターバブル現象(好みの情報だけに囲まれ、好みではない情報に接しづらくなる状態)」が起こることがよく知られていますが、AIも同じです。AIとの親密な会話自体が「AIに学習される」ことによって、SNS以上に思考が偏る…場合によっては“洗脳”に近い状態になるという危険もひそんでいます。2024年の秋にはこんなニュースも出ていました。

▼ 14歳の息子が自殺する前にAIチャットボットに夢中になっていたとして母親がCharacter.AIを訴える
https://gigazine.net/news/20241024-character-ai-faces-lawsuit-teen-suicide/

現時点において、AIはあくまで「便利なツール」です。2025年のNRFでも“AIの活用”が重要なトピックになったように、AIの可能性は非常に大きいと考えています。
でも、インターネットをどう使いこなすか、SNSをどう使いこなすかという問題・課題と同じ…あるいは、それ以上の問題・課題がAI使用にはついてくるという懸念はぬぐえません。