児玉 千恵子

2018 20 Nov

瞬時に、お客さまの全身の美点や弱点を見極め、最もベストな値を見つけ出せる

瞬時に、お客さまの全身の美点や弱点を見極め、最もベストな値を見つけ出せる
ボディ&スタイリングフィッター実践講座 かつては多くの百貨店に、婦人服のオーダーサロンと、E・O(イージーオーダー)の売場があった。前者には、憧れの「○○先生」といわれた華やかで腕の良いデザイナー(クチュリエール)が常在していた。
 かたや、E・Oでは「仮縫い」はないが、瞬時に、お客さまの全身の美点や弱点を見極め、最もベストな値を見つけ出せるスタッフが沢山いた。
 双方の売場には、多様な生地が用意され、好みの素材を選べたから、世界でたった一着の「マイウェア」をゲットできたという満足感を得られた。
 紳士服の場合、昨今でも注文服やパターンオーダー、E・Oに根強い支持層があるのは、プロの仕事人による完成度や心くばりが、着手にとって自然体だからだろう。
 CADによる型紙でも、入力時のデータやシミュレーションによっては、修正部分が出る。
 仕事人と言えば、デザインから縫製までの一切を、自らがこなしたピエール・カルダンや、イヴ・サンローランは、クチュリエそのものだった。
 サンローランには、興味深いエピソードがある。顧客の一人から、パンツスーツのすべてを委ねられ、完成した自信作を試着していただいたところ、「私に似合ってないッ」とお叱りを受けた。
 彼は、たじろぐことなく「アップの髪を下ろして・・・」「上着のインナーは、胸元の開いたカット&ソーに替えてみよう」「上衿をさりげなく立たせて、ネックレスをつけて・・・」と、粋なコーディネイトで変身させると、彼女の表情は喜びに変わった。
 顧客の最もチャーミングな要素を開花させ、潜在的な願望まで気づかせてみせたのだ。
 時代は前に進んでも、創る人、売る人にとって、お手本にしたい情熱的な美意識とスタイリングは不滅のようだ。
 (繊研新聞 FB連続小講座 児玉千恵子書き下ろし「ボディ&スタイリングフィッター」 より抜粋)
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