山田 晶子

2018 02 Jul

Disruptionも社会潮流

【社会潮流】は、ファッションに示唆を与えてくれる…
Disruption(ディスラプション)=破壊、混乱」は、社会潮流のキーワードのひとつである。年に1NewYorkで開催される全米小売業協会大会でも、2016年頃からファッションビジネス潮流の注目ワードのひとつとして掲げられており、2018年の大会では「Disruption is New Normal(ディスラプションは新しい普通)」と言われ始めている模様。 「ファッションビジネス」のみならず、「ファッション」そのものを構成する【もの】自体にも、ディスラプションは起こりはじめている…!

■夏の有力素材の新たな姿
2018SSの素材トレンドのひとつとして「サッカー」が浮上。新たな切り口として「エレガントな」ワンピースやセットアップが登場した。そのサッカー達は、コットンのみならず、シルク混、ポリエステル混と多種多様な組成のものが多く見受けられる。素材の特徴として、一般的に記述されているのは、
経糸に収縮率の違う糸を 何本かおきに配列して織り、シボと呼ばれる波のようなシワが、生地の表面に凸凹とあるのが特徴。このシボがあるので生地が肌に触れる面積が少なくなり、涼しく感じるという構造となり、シワにもなりにくい」
といった内容。
事例として登場するのは、個人的に購入したサッカー素材のセットアップ(トップス+スカート)です。
この製品の混率は〈コットン83%、ポリエステル16%、 ポリウレタン1%〉と表記があり、品名も〈コットンサッカー〇〇〉と謳われている。見た目も、サッカー素材のそれである…消極的なシボではあるが。
着用体験を通して判明したことは、「あまり涼しくなく、かなりシワになる」という点であった。本来収縮度の異なる糸で出るシボもあまり出ていず、故に素材涼感もイマイチなのだろうか…? 日光のもとで素材を凝視すると、微妙なキラキラ感(これはポリエステル糸の成せる技?)があり、フレアスカートのハリ感を形成しているのは、このポリエステル糸たちなのだろうか…? そして、このハリ感で、着用後シワもできやすいのだろうか…?
という現実の中、辿り着いた結論(推察)としては、「テクノロジーの進化によって生み出された新たな素材においては、従来の【その素材の特徴】とされていた内容は、もはやディスラプションされている」 
セールストークでも「サッカーですから、シワになりにくく、涼しいです」と、安易に言えない時代が到来しているのである。

〈一般的なサッカー素材〉

植物的な合成繊維
今シーズンの素材トレンドのひとつに「リネンライク」「コットンライク」というものがあり、「リネン調」「コットンぽい」素材たちが【旬】である。 天然繊維の模倣ではない、独特の感触やなめらかさを持った素材たちであり、天然繊維の粗野感から離れた、心地良いハイブリッド感が新しく、「リネン調」はキュプラ、リヨセル、ナイロンとの複合で拡大傾向がみられた。ちなみに私は、こういった素材たちを「植物的な合成繊維」と呼んでいる。ここから読取れる社会潮流としては「ディスラプション」であり「ボーダレス」。もはや、天然繊維と合成繊維の垣根はなく「技術革新のおかげで、好きなように好きなものを作ってみました」といった感覚でしょうか…。 ある意味「ダイバーシティ(多様性)」とも受けとめられる。素材も、トランスジェンダーのごとく、見ただけでは、触っただけでは、その組成は謎のまま。「個」として良ければ、それでよい時代に突入してきたのでは…?
あるテキスタイルコンバーターの方いわく 「もう、従来的な素材の特徴を覚えても、製品特徴としては、段々意味は成さなくなってきてますね…」。 
テクノロジーの進化は、素材に「鮮度」と「破壊」を与えてくれている。
yahoo.co.jp
■「Disruption is New Normal(ディスラプションは新しい普通)」
20世紀ではあたりまえであったこと…「トレンドカラーは〇〇です。トレンド素材は◇◇です!」といった、いわゆるシーズンを牽引する圧倒的なトレンド…グローバル発信に追随していれば、事足りる時代…それは終焉を告げています。
21世紀になっても、手法が変えられなければ、そのビジネスは衰退していくのが世の常でしょう。 
「ファッションは時代の鏡」であり、自ブランドは、時代の【何】を鏡に写すのか?
もし、鏡が曇がちなのであれば、【社会潮流】が、ファッションが向かうべき方向を示してくれ、21世紀のファッションビジネスに活路を与えてくれます。【社会潮流】の深掘りにご興味のある方はご連絡を。 
では、また次回!!