北村 禎宏
2018
10
Jul
経営品質の劣化
わが国の製造業の現場が疲弊している。鉄鋼、化学、自動車と不正の発覚が後を絶たない。因果をたどるとそれは経営品質の劣化にあると考えられる。
三枝匡氏の議論を引いてみることにする。
第一ステージ(~1970年代)では、米国をひたすら真似し続ける日本があった。
第二ステージ(1980年代~)では、品質とコストで有意に立った日本に米国が謙虚に学び始めるということが起こった。その先兵はアベグレンとヘンダーソンで、日本の暗号は見事に読み解かれてしまった。現場におけるQCサークルや提案制度による効率化と高品質化だ。究極の奥義は「トヨタ生産方式」で、後のタイムベースドマネジメントへと結実していくことになる。
第三ステージ(1990年代~)ではバブルに浮かれた日本の凋落と米国の復活が訪れる。そしてわが国は未だ第三ステージを抜け出せないまま人口縮小経済に突入してしまった。
アメリカ流経営には9つの弱みがあるとされる。
1.安易な多角化
2.高すぎる配当性向
3.短期リターン志向
4.組織の非継続性
5.品質よりも目先の利益追求
6.ものづくりの弱さ
7.インスタント成金主義
8.社員の低コミットメント
9.所得配分の過度の偏り
残念ながら第三ステージからもがき出ようとしたわが国が、よかれと思って取り入れてしまったのは、ことごとくこれらの弱みであることは歴史の皮肉だ。
その結果、疲弊の極みにある現場の人々からの悲鳴が聞こえてくる。経営品質の回復が急務の課題だ。