北村 禎宏

2018 30 Jun

ヒストリー

 日経MJの重松名誉会長(ユナイテッドアローズ)の連載が終盤に入りつつある。
当時はワールドの管理する側から見ていた私だったが、反対側から見るとまた異なる景色が展開されていて、懐かしいとともに大いに勉強になる。

 重松さんは一次はクビを覚悟したと述べておられるが、UAを粘り強く支えたのは間違いなく畑崎さんの執着心だ。組織的管理的には完全に見切られても仕方ない当時の状況であった。

 そんな中、93年秋に状況が一変して来客が急増したとある。理由は①寒くなるのが早かった気象要因、②ラジオCMの集中投下、そして③雑貨の拡充だったとある。戦略上の選択と捨象による絞りが効いていたことと、天候という偶然がUAを水面上に浮上させたことになる。奇しくもOZOCがデビューした同じ93年8月の直後の出来事。ヒストリーはまことに面白い演出をする。

 ところで、当時のブルーレーベルは感度、品質ともにほどよいレベルで、多くの商品にお世話になった。およそ20年前に購入したスプリングコートはいまだに現役だ。その後、ビューティ&ユースとGLRという新しい業態に吸収されていったレーベルだが、UA業態の中で展開されていた当時がもっとも印象に残っている。連載では最終的にいかなるオチになるのかのか楽しみだ。そんななか飛び込んできたのがワールド再上場のニュースだ。数ヶ月前から動きとしては伝わってきていたが、
やっぱりそうなのねという感じだ。言いたいことはいくつかあるが、公の場での発言は差し控えておこう。

 ヒストリーは様々な綾によって紡がれていく。当事者の目論見や思惑が複雑に絡み合い、最後は偶然のいたずらが触媒となって歴史は形成される。業界にどんな風が吹くのか。風雲児前沢氏(スタートトゥディ)の「ファッションに不況感なし」との発信は心強い限りだ。非常識にこそチャンスありとも語っている。

 同じ人々が同じことをやっていたのではイノベーションにならない当たり前のことが、ごく普通に身についている経営者だ。さあ、どうする?