北村 禎宏

2018 13 May

さらに移ろいゆくもの

 3月の北村塾では、日本の経営を創る(伊丹敬之/三枝匡)を扱った。わが国は第三ステージの長いトンネルと抜け出すことができるのか。そして流行の働き方改革は吉と出るのか凶と出るのかという主題だった。


 三枝節の一端を嗅ぐことができたので、昨日は引き続きで「V字回復の経営」を題材にディスカッションを行った。何度か引き合いに出させてもらったが、三枝四部作はビジネスパーソンのバイブルとして傍らにに必須の書だ。

 ちなみに第三のステージとは90年代以降の日本の凋落と米国の復活以降の失われた●十年と表現される時期(現在も)を指す。遡る第二ステージは米国が謙虚に日本に学び始めた80年代以降、第一ステージは日本がひたすら米国を真似し続けた70年代までを指している。

 第二ステージへの移行は日米繊維摩擦がその象徴で、その後自動車摩擦、半導体摩擦と米国はその手を緩めることはなかった。途中バブル経済に浮かれてしまったわが国は、オセロの再逆転に気付かないまま第三ステージの現実に直面して右往左往してはや●十年が経過したという訳だ。

 三枝ロジックを愚直に実行することができれば、会社は二年で変えることができる筈だが、●十年の迷走は何を意味しているのだろうか。三枝氏の嘆き節はわが国における経営リテラシーの貧弱さだ。それは経営者に限らずひろくビジネスパーソン全てにあてはまる問題でもある。週休三日や定時就労ではたしてどこまで突っ込んだ仕事ができるだろうか。単純作業員であれば問題はないだろうが、変革を伴う知識労働のあるべき姿はいかに?

 塾生のひとりが転職したので、その後を聞かせてもらうのが楽しみだ。東京に転勤した二人の塾生とは東京開催を検討し始めた。MBAの同窓生が金沢に移住して第二の人生を始動したというので会いに行こうと思っている。それぞれの人生は喜怒哀楽をともないながら移ろいゆき続ける。わが国は第四ステージに移ろいゆくことはできるのか…