上野 君子

2021 10 May

シニアおひとりさまの貧困問題

最近、アルバイト・パート市場がすごいことになっていることをご存じだろうか。

恥をしのんで言うが、私は4月から1か月以上、仕事がない。
いや、週2日の副業の方は続いているが、こちらは家計のいわゆる固定費をカバーするだけの金額。本業(一応、ライターです)の方、しかも対価のある生産性のある仕事が消えたのだ。
そこで、毎日、ネットで仕事(とにかく近場でできる週1~2日、および単発)をさがしているのだが、これがひっかからない。ギグワークも含め、応募しても空しい返事だけ。
コロナの影響で、いかに職を求めている人が多いかということである。
ネットの求人に応募するには、その人のキャリアなどの詳細欄はなく、名前と連絡先、そして生年月日が必須なのだが、つまり60歳以上の年齢は完全にふるいにかけられるのだ。

最近の世の中の傾向として、学生や若いシングルマザーを支援しようという機運は高まっているが、60歳以上のシニアの貧困問題に言及するニュースはほとんどない。ずっと派遣社員で働いてきた50代の実情については時々ニュースになるが。そういえば、昨年だったか、若者に殺されてしまったホームレスの女性は確か私と同年代だった。

シニアといえば、もう定年退職して悠々自適のイメージがあるかもしれないが、私のように長年フリーランスで仕事をしてきた人間は退職金なし、年金も国民年金の微々たるもので、死ぬまで働き続ける覚悟で生きている人間もいるのである。
ところが、「人生100年時代」にもかかわらず、シニアの仕事はほとんどない。いや、清掃などの限られた仕事はあるが、ハローワークの求人を見ても、地方自治体のシルバー支援の求人を見ても、自分にできる仕事やのぞむ仕事はほとんど見つからないのが現実だ。
先日、アカデミー大賞をとったアメリカ映画、『ノマドランド』のような環境も受け皿もこの国にはない。最後のライフラインの選択肢は生活保護のみである。

ファッションビジネスに長年かかわってきた人はなかなか声があげられないと思うが、苦しみ悩んでいる人は私だけではないのではないだろうか。この雇用に対する社会の構造をどうにか変えることはできないだろうか。