宮田 理江

2022 21 Sep

2022年度(第40回)毎日ファッション大賞の表彰式開催 大賞はNIGO®氏 思いを貫く人たちが受賞

2022年度(第40回)毎日ファッション大賞の表彰式が2022年9月20日に開催されました。第40回という節目を迎え、あらためて日本で最も価値のあるファッションアワードの重みが感じられます。2014年から推薦委員を務めてきましたが、今回からは選考委員となり、いっそう身の引き締まる思いで式に臨みました。表彰式の様子は公式サイトでライブ配信されました。大賞を受賞した、「KENZO」アーティスティックディレクター、「HUMAN MADE」デザイナーのNIGO®氏をはじめ、受賞した皆さんそれぞれがメッセージを述べ、受賞を祝い合いました。おめでとうございます。

 

◆大賞 NIGO®氏 KENZOアーティスティックディレクター、HUMAN MADEデザイナー

「裏原」と呼ばれた日本流ストリートカルチャーのパイオニアです。でも、この日はピンストライブのスーツ姿で来場。ネクタイも締めて、この賞への敬意を示しました。受賞コメントではジョニオさん(「UNDERCOVER」デザイナーの高橋盾氏)とショップを開いたところから始まったストリートカルチャーを振り返り、「無冠で今まで来たけど、このような賞がもらえて心からうれしい」と、率直に受賞のよろこびを語っていたのが印象的でした。「日本のファッションの楽しさ、文化の素晴らしさを国内、海外へと伝えていきたい」という抱負も語っていました。

 

◆新人賞・資生堂奨励賞 田中文江氏 「FUMIE=TANAKA(フミエタナカ)」デザイナー

前身ブランドの「THE DALLAS(ザ・ダラス)」を含めて、20年以上のキャリアを持つベテランですが、現在のブランドが2020年春夏シーズンからスタートしていることから、「大物の新人」という形での受賞となりました。ご本人も「新しい人と書いて新人。年齢やキャリアにとらわれず、このような受賞を頂けたことに感謝します」とコメント。「新しい夢に向かって進んでいきたい」と、さらなる前進を約束しました。

 

◆鯨岡阿美子賞 北村道子氏 スタイリスト

映画、広告、雑誌など、幅広い媒体で衣裳を手がけてきました。映画衣裳での評価が高く、『それから』(森田芳光監督)や『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(三池崇史監督)などで知られています。スピーチでは「長く続けているといいことあるなって、ご褒美をもらえた」という飾らない言葉で受賞に感謝を述べていました。

 

◆話題賞 デニム de ミライ ~ Denim Project ~

伊勢丹新宿店が中心になって、約20トンもの「リーバイス 501」のユーズドストックをアップサイクルするプロジェクトが話題賞に選ばれました。企業グループや取引の枠を超えて、デザイナーやクリエーター、アーティストも巻き込む形で横断的に取り組み、多彩なプロダクトを生み出しました。三越伊勢丹リ・スタイルバイヤーの神谷将太氏の受賞コメントではサステナビリティーやアップサイクルにファッショナブルなアプローチで取り組む意義を語りました。

 

◆話題賞 松任谷由実(ユーミン)氏 シンガー・ソングライター

デビュー50周年を迎えたユーミンはファッションアイコンとしても別格の存在。ステージでは様々なコスチュームを披露してきました。ミュージシャンとファッショニスタという2つの顔を持つ自分を、「コウモリ」と言い表していたのは、謙遜した気持ちの表れでしょう。「おこがましいような、それ以上に誇らしい気持ち」と、受賞を喜び、「この先の私の夢は続けること。歌を作ること、パフォーマンスすることを続けていきます」と語りました。

 

表彰式の後は、新人賞・資生堂奨励賞の田中文江さんが受賞記念のプレゼンテーションを披露。2022-23年秋冬コレクションの世界を再現したファッションショーが開かれ、優美でありつつ、凛とした作品で来場者を魅了しました。

 

今回の受賞者の顔ぶれは、華やかさがあるうえ、納得感が高いのはもちろんですが、それぞれの「軸」がしっかりしていて、オンリーワンである点、その人らしさが際立っているところが共通点と感じられます。40回の節目にふさわしい、実力や重みを備えた人たちが選ばれたことを、喜ばしく思います。自分の価値を信じて、長く続けることの大切さを、あらためて教わったような気がした表彰式でした。

「2022年(第40回)毎日ファッション大賞」表彰式 / 提供:毎日新聞社

毎日ファッション大賞
https://macs.mainichi.co.jp/fashion/