宮田 理江
ピエール・カルダン氏の業績を振り返るドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル!』公開へ
◆オートクチュールからプレタポルテへ 「ファッションの民主化」を切り開いた先駆者
偉大なファッションデザイナーのピエール・カルダン(Pierre Cardin)氏の業績を振り返るドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』が2020年10月2日(金)から全国で公開されます。7月に98歳を迎えたご本人も元気に登場しています。
クリスチャン・ディオールに見出されたカルダン氏は1950年に自らのアトリエを構え、今年で70周年を迎えました。オートクチュールの時代から、プレタポルテの時代へと移り変わる時期に立ち会い、プレタポルテを最も早い時期に始めたことが映画の中で示されています。その意味では「ファッションの民主化」に道を開いた功労者とも呼べるでしょう。
◆ロゴマークの火付け役! ファッションの商業化を先取り
「ファッションの商業化」で先陣を切った人物としても有名です。ごく少数の特別な上顧客だけを相手にするオートクチュールとは違って、不特定多数の一般消費者をマーケットとしたビジネス手法は、「ファッションビジネス」の規模を格段に広げました。さらに、イニシャルを図案化したロゴマークを使って、無数のライセンス商品を企画。「やりすぎ」の批判を浴びるほど、カルダンロゴを街にあふれさせました。
ライセンスの対象は、ファッションの枠にとどまらず、日用雑貨や食器、タオルなどにも及びました。現在も多くのブランドがホームコレクションを手がけていますが、カルダン氏はその先駆けと言えます。もっとも、手を広げすぎたせいで、商品管理に苦労したことも。映画の中でも、安易なライセンス商品の氾濫に、カルダン氏自身が激怒するという、貴重な会議シーンが収められています。
◆森英恵氏や高田賢三氏も語る、日本人の装いに大きな影響力
日本とも深いつながりがありました。日本人モデルの草分け的存在となった松本弘子さんをモデルに起用。日本人・東洋人初のパリ・コレクションモデルとしてデビューする舞台を用意しました。カルダンブランドは日本で人気を博し、百貨店の雑貨売り場にはライセンス商品があちこちに並べられました。日本に初めて本格的に持ち込まれたパリモードのブランドだったこともあって、当時のおしゃれ好きにとっては圧倒的な存在感があったようです。
本業のモードでも日本へのインパクトは絶大。洗練されたシルエットや、ポジティブな色使い、フレッシュなミニ丈ルックなどは、日本人の装いに大胆な変化をもたらしました。当時を知る森英恵氏や高田賢三氏も、劇中でカルダン氏の先進性を語っています。ボディラインを拾いすぎないシルエットを打ち出したのも、彼の功績です。近年もビッグシルエットはトレンドになっていますが、その先駆者と呼べそうです。
◆クラシカルで楽しいカラフル配色が今の気分
クラシカルやフレンチシックがトレンドに返り咲いている今、カルダン氏の作品はそのままリプロダクトして売り出してもよさそうなぐらいです。カッティングの冴えや、映画タイトル通りのカラフル配色は、むしろ今の気分にぴったり。ファッションを取り巻く状況が大変な時期だけに、「モード界の革命児」と呼ばれ、ファッションをビジネスに変えたカルダン氏の仕事ぶりを振り返ることのできる機会は見逃せません。
『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』
2020年10月2日(金)よりよりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開!
2019年/アメリカ・フランス/101分/ビスタ/5.1ch/原題:HOUSE OF CARDIN /
日本語字幕:古田由紀子/後援:在日フランス大使館 アンスティチュ・フランセ日本/
(c)House of Cardin - The Ebersole Hughes Company
https://colorful-cardin.com/
Written By Rie Miyata
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