栗田 亮

2018 16 Jan

アパレルって何ですか?

数年前ファッション専門学校で講師をしていたときの話です。授業が終わる間際に質問が出ました。

 

「先生、アパレルって何ですか?」

 

そこまでおよそ一時間、「アパレル」業界の仕組みや、SPA、ファストファッションについて丁寧に説明してきたので、この質問はかなり衝撃的でした。(今までの話は全部の頭の上を通り抜けて行っただけなのか・・・。)

 

彼らは講師に気を使わないので、社会人セミナーでは決して出ない、配慮のない質問が容赦なく飛び出します。講師にとっては、それだけスリリングで鍛えられる場であるともいえます。

 

このアパレルウェブを読んでいる方は「アパレル」業界関係者が多いと思いますが、このような「今更ながら」の質問を受けたら、なんと答えますか?

 

私の場合は、「いい質問ですね」などといって、とりあえず現時点で知っていることを話して、その場をやり過ごそうと思いました。しかし、こういうことを聞かれると、結構燃えるタイプなのです。結局「難しい質問なのすぐには答えられませんから、次回までに調べてきます。お楽しみに。」と言ってしまいました。

 

 

さっそく家に帰ってから広辞苑(第六版)を調べます。

 

【アパレル】

衣服。特に、既製服のこと。

転じて既製服業界・ファッション衣料の製造業者などをさす。

「―産業」

 

と出ていました。ここで、

 

①衣料品

②既製服

③既製服業界

④ファッション衣料の製造業者など

 

と、「アパレル」には4つの意味があることがわかりました。

 

ちなみに広辞苑は、先般十年ぶりに改訂され、第七版が店頭に並んでいますが、この「アパレル」の定義は変更されていません。

 

次に、Googleで「ヤフー知恵袋」などを検索し、世間一般で「アパレル」はどのように使われているか調べてみました。

 

-衣服のことです。

 

-洋服 洋装品 製造 流通 販売業

 

-洋服関係のお仕事のことです☆ 販売員とか服を作るお仕事とか。

 

-最近のアパレルメーカーは、衣服だけでなく、靴や衣料小物も販売している所が多く、衣服だけでなく衣料品全般を指して「アパレル」という場合も多いです。

 

などといった回答が並んでいました。

 

①~④に加えて

 

⑤洋装品

⑥製造

⑦流通

⑧販売業

⑨販売員

 

も「アパレル」だと思っている人がいることがわかりました。(本当かな?)

 

 

次に「アパレル業界」で検索してみたところ、転職サイトや業界研究などが出てきます。

「川上・川中・川下」などといった用語でアパレル業界を説明しているサイトがいくつかありますが、用語や分類がまちまちで、ちょっとわかりにくいです。

 

 

それでは、英語ではどうでしょう。

Oxford Dictionaryを調べてみると

 

Apparel

1   (especially NAmE) clothing, when it is being sold in shops/stores

2 (old-fashioned or formal) clothes, particularly those worn on a formal occasion

 

【アパレル】

1 (特に北米英語)店舗で販売されている時点の衣料品。

2(古風な、正装の)特に、正式な場で着られる衣料品。

 

と出ています。

 

さらにGoogleで「Apparel」の一般的な使われ方を調べてみると、

 

"Apparel" means clothing in general. In the rag trade, "apparel" is a generic description that covers menswear, womenswear, children swear and sportswear. Also in the trade, "apparel" often means a company that deals in wholesale or retail trade of finished garments whereas "garment" companies are relatively more involved in the manufacturing and fabrication sides.

 

「アパレル」は一般的には衣料のこと。

衣料品業界で「アパレル」は、紳士服、婦人服、子供服、スポーツウェアを包括して意味する。

商取引で「アパレル」は、既製服の卸や小売を営む企業の意味で使われることが多い。

一方で、製造業により近い企業は「ガーメント」企業と呼ばれる。

 

The word can be used as a noun and a verb. While used as a noun, it means the clothes that you wear. As a verb, it refers to the process - clothe (to clothe someone).

 

名詞として使われる場合と動詞として使われる場合がある。名詞としては、身につける衣服。動詞としては、その過程、~に衣服を着せる

 

などの情報を得ることが出来ました。

 

さらに英語の場合、ひとくちに衣料品といっても、

 

クローズ(clothes) クロージング(closing)、  ガーメント(garment)、 ウェア(wear)、 ワードローブ(wardrobe)、 コスチューム(costume)、 ギア(gear)、 ドレス(dress)

 

といったように、対応する単語がたくさんあり、それぞれ使われ方やニュアンスが違うようなので、調べはじめると時間がかかりそうです。

 

そこで、ここで一旦まとめを作ることにしました。

 

 

まとめ:アパレルって何ですか?

 

アパレルとは英語で衣料品のこと。古いフランス語から英語に入った言葉です。

 

もともとは正式な場で着られるような古風なフォーマルウェアのことを「アパレル」と言っていました。

 

最近では、店で売られている衣料品のことを「アパレル」ということが多くなっています。つまり、この場合の「アパレル」とは「既製服」のことです。

 

転じて、既製服業界や、特にファッション衣料の製造業者などが「アパレル」と言われるようになりました。

 

さらに最近では、衣料品の小売業者や販売員まで「アパレル」に含めることも増えています。というのは、ファッション衣料の製造業者が小売りをしたり、小売業者が製造したりすることが多くなり、両社の境が曖昧になったためです。「アパレル」の意味合いは広がっています。

 

英語の場合、アパレル以外にもクローズ、グロージング、ガーメント、など衣料品全般を指す言葉がたくさんありますが、その中で「アパレル」は「アパレル・ビジネス」というようにビジネス用語として使われることが多いようです。

 

また、英語の場合、「アパレル・ビジネス」の中でも、縫製の過程を特に「ガーメント」と呼ぶことが多いようです。これは、縫製過程が発展途上国に外注されることが多く、その低賃金や労働環境が社会問題になっていることと関係がありそうです。

 

「アパレル業界」と言われた場合は、「既製服業界」と理解すれば分かりやすいです。

 

 

以上のようなまとめをして、翌週生徒たちに話をしました。

 

自分なりにうまく説明できたかなと安心していたところ、件の生徒さんがまた質問してきました。

 

「じゃあ、アパレルとファッションは何が違うんですか?」

 

「・・・・」

 

また、配慮のない質問が飛び出しました。

 

う~ん。

 

この件については、次回までに調べてきます。

 

今日はここまで~。

 

(キンコンカン)