久保 雅裕

2021 20 Jun

スモールビューティーを生かすハコとは

小田急線地下化に伴い出来た跡地「下北線路街」に6月16日、個店を集めた「reload(リロード)」が開業した。その2日前、プレス内覧会でまだ準備中といったところのリロードを訪ねた。
まずは一切の大手チェーンの出店を避けて、ローカルな個店レベルを集めた点が一番の特徴だ。地元と協議を重ねて、コンセプトワークを進めてきた点も他に無い特筆すべき点だろう。
白を基調に一つ一つの区画が独立したような作りになっており、同じ形状の区画が並ぶことはない。歩いているうちに、どこに居るのか分からなくなってしまう同じようなレイアウトのSCが多い中、リロードの「街感」も大いに受けることが予見できる。
こうした線路跡地を使った路面分棟形式の商業施設では、渋谷・代官山駅間にある「ログロード」が最近では先達と言えるが、それよりも細かく、テナント区画も多く、さらには代官山と下北沢という街の格の違いも色濃く反映されたテナント構成と言える。
ウェルネステーマのカフェ、カレー屋、立ち呑み居酒屋、ファッション、雑貨、文房具、本屋などがとりあえずオープンしている。またイベントやポップアップストアができるスペースも2ヶ所あり、「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカル・マリエ・テマレ)」がオープニングを飾っている。
そぞろ歩きしても、楽しめそうなニュースポットの誕生だ。

少しエスニックテイストのアテ(総菜)が楽しめる立ち呑み居酒屋「立てば天国」


ボディメンテナンススタジオが運営するウェルネステーマの「FLUX CAFE」


小洒落たステーショナリーのセレクトショップ「DESK LABO」


渋谷ファイヤー通りから移転してきた古着屋「CYAN」


「カレーの店ボンベイ」のシェフが作るカレーとギャラリーの店「SANZOU TOKYO」

地下1階~地上5階の堀ビル外観

同じような視点で見て、新橋にかつてあった建具金物専門店「堀商店」のビルをリノベーションし、賃貸オフィスへと転換した「GOOD OFFICE(グッドオフィス)新橋」にも注目したい。オーナーである堀信子会長の「このビルを残したい」との思いに応え、竹中工務店がマスターリース契約し、リノベしたのだが、随所にその名残を感じることができる。築89年、国の登録有形文化財だ。
12.5~55.8㎡の20部屋のオフィスに加えて、キッチン付き会議室、1階のラウンジスペース、屋上スペースなど共用スペースもある。
窓枠やドア、階段の手すり、床のタイル、シャンデリアなど、往時を偲ばせるフックが盛りだくさんだ。「レトロビルで働きたい」というノマドワーカーや起業家にはもってこいの物件かもしれない。また地方に本社拠点を移した企業のサテライトオフィスにもなり、ちょっとした捻りと洒落感のある打ち合わせ場所として活用できそうだ。


4階は、オーナーが住まいとして使っていたため、日本家屋の趣を残しており、風呂場も小さなオフィスに


屋上や1階のラウンジは共有スペースとして活用できる。

どこか南欧風のアールの多い床、壁、天井


ドアやシャンデリアなど随所に名残が

いずれにしても、小さな企業や個人が、引き立つための場所(ハコ)として、このような環境が増えていくことを望む。