久保 雅裕

2017 27 Nov

ブランド価値を高めるには時間が必要

「CITIZEN OF HUMANITY(シチズン・オブ・ヒューマニティー)」の春夏プレビューで、日本では配布できないという本国で作っている冊子をいただいた。冊子やカタログというには申し訳ない程、立派な装丁とクリエイティブな本なのだが、一部袋綴じになっていて、その中にはちょっと公開できない写真も含まれているため、一部の人にしか、今回は渡していないそうだ。

ケイトモスも特集されている

今号は、ゲストエディター&ディレクターに写真家のDAVID BAILY(デビッドベイリー)を迎え、彼らしからぬポートレートも掲載されている。60年代『ヴォーグ』誌にて活躍した彼は、「スインギングロンドン」ブームの一翼も担った。もともとはミュージシャンを目指し、カメラマンから映画監督に至るまで、その活動の幅広さも凄いことなのだが、未だに新たなクリエイティブに挑戦している事に頭が下がる。来年には80歳の大台に乗るのだから。齢を重ねても挑戦を続ける姿勢が若さを保つ秘訣だと思う。この冊子では、以前オノヨーコが特集されたものも戴いたことがある。A3判、100ページを超えるこんな素敵なものを発行し続けられるブランドのアイデンティティーに凄みを感じるのは筆者だけではないだろう。

翻って、ブランドの発信力の一つとしてのこうしたアーティスティックな活動がどれだけの効果をもたらすものなのか。効果測定は難しいが、一過性に留まらなければ、必ず浸透していくものだと感じる。

アッシュには多くの著名人に登場いただいた。左から時計回りに、宮嵜あおい、佐田真由美、剛力彩芽、木村文乃、道端ジェシカ、安室奈美恵、松任谷由実、水原希子、倖田來未、杏、上戸彩(敬称略)

昔話で恐縮だが、senken h(アッシュ)をスタートした時には、いろいろと苦労してお願いし、表紙や中面の大判ビジュアルを撮影し、作り込んだものだが、3年も続けていると、フォトグラファー、スタイリストあるいはタレントからも、「やらせてほしい」と希望が舞い込むようになった。石の上にも3年とはこの事か? 最初にタレントで出ていただいたのが宝生舞さんだった。フォトグラファーは、現在ニューヨーク在住のベッキー・イーさん、ブランドはパリ在住の星野貞治さんの「エス・アストラム」、コーディネーターは、現在AFP通信「MODE PRESS(モードプレス)」編集長の岩田奈々さんだった。そんなところから写真のような錚々たる方々に出ていただけるようになった。シチズン・オブ・ヒューマニティーの本とは比べようもないが、長く続けることが「ブランドという価値」を育てることになるのは間違いないと確信する。