久保 雅裕

2018 22 May

アニエスbの「タラ号」船内に潜入

「アニエスb」が設立したことで知られるタラ財団の海洋調査船「タラ号」が竹芝小型船発着所に停泊している際に開かれた船内でのブリーフィングに参加した。20人ほどでいっぱいになってしまう船内で、調査内容と取り組みについて説明が行われた。

現在取り組んでいる「太平洋プロジェクト」の主な任務は、海中微生物やプランクトンを採取し、マイクロプラスチックの影響を調査することと、サンゴ礁の白化現象の実態を調べることの2つだそうだ。

前者は廃棄されるペットボトルやレジ袋、プラスチック製品から細かくなったマイクロプラスチックが海に漂い、食物連鎖を経て生態系に及ぼす影響、延いては我々が口にする魚や肉への影響まで考えねばならない問題となっている。

後者は、地球温暖化の影響なのか、はたまた人的な汚染の影響なのかも含め、海の健康のマーカーともいわれるサンゴの環礁を調査してきた。

3000回潜水し採取した3万もの調査サンプルは、筑波大学、高知大学、宮崎大学、東京大学など、それぞれの研究機関で解析が行われ、その結果の公表と、更には一般に向けた啓蒙活動なども重要な役割の一つとして実施されている。

ブリーフィングでは、マイクロプラスチック問題についても、細かく説明がなされた。砕かれたプラスチックを基盤として、そこに藻が生息し始め、嗅覚で藻を捕捉した魚が食べ、食物連鎖が始まる。同じくプランクトンもそのスタートラインに存在しており、プラスチックを飲み込んで魚の腹の中へと入っていく。これら海洋のプラスチックは年間800~1000万トンと推測されているそうだ。途方もない量だ。

タラ号は、こうした活動から生まれた知見を啓蒙するために教育活動も行なっている。併せてサーキュラーエコノミー(循環型経済モデル)の確立や立法措置、技術革新、インフラ整備といった社会への働き掛けも行なっているという。汚染物質を排出している企業を責めるだけでなく、一人一人がこの問題を自身の事として捉え、声を上げ実践していくことが大切で、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてレジ袋やストローなどの不使用をめざす「プラスチックフリー」を発信していくことも提言として語られた。

全く同感である。しかし、もう一つ見落としてはいけない点がある。それは世界中の大都会にあるスラム街などの汚れた街を見渡せば、モラルもルールもへったくれも無いゴミの散乱がある。フィリピンにはゴミ山で暮らし、ゴミで生計を立てる1日1ドル以下で生きる少年たちが存在する。そこには生活するのに精一杯の人々がたくさん居て、ゴミの事まで頭が回っていないのが現実だ。こうした貧困の解消も忘れてはならない大きな課題でもある。