久保 雅裕
直営店を持たないブランドの為の売り場を作ろう
現在、新宿のNEWoManで開催中のSOLEIL TOKYOポップアップストア
19年春夏シーズンのパリメンズファッションウイーク中の取材を通じて、あるデザイナーの悩みに耳を傾けた。7月上旬に掲載されたファッションスナップの記事でも触れているのだが、「ニューヨークのどうしても入れたい店だったので、デポジットが未払いでも生産に入ってしまい、結局キャンセルになって在庫を抱えてしまった」(あるデザイナーブランド)という結構あるあるな話だった。「売りたい店」=「それなりに有名な店」だから、裏切られることはないだろうという贔屓目もあったのだろう。しかし意外と有名な店ほど曲者で、支払いが悪いとか委託だとかのケースもままある。
また海外に限った話ではないが、「あと数枚あればドロップせずに済むのに」というギリギリの線のオーダー品番もあったりする。しかし彼らには直営店が無いため、それを押し込む先がない。既存取引先にお願いして売ってもらうという手もあるが、「あまり借りを作りたくない」という気持ちも擡げてくる。そして、根本的に小売店からの少ないオーダーの繰り返しではいつまで経っても拡大していかない。
ならばアウトプット(在庫を売れる場所)さえあれば、少しのリスクはあるがドロップしそうな品番に積み増しして、直接消費者と接して反応を見るなどマーケティング的にも、また量的拡大にも挑戦できる。前述のデザイナーのようなことになっても、いわゆるセイフティーネットにもなる。
そんな事を考えて、百貨店やセレクトショップにこういった直営店を持たない小さなブランドの在庫販売コーナーを店内の一部に作れないだろうかという相談を持ち掛けている。既にいくつかの小売りが検討してくれており、この輪を少しでも広げていきたいと思っている。共感していただける小売業、商業施設の皆さん、またこの取り組みに参加したいと思うブランドの方々からの連絡をお待ちしています。
このような取り組みが、業界活性化の一助になったらとの想いで暫し動いてみようと思う。