久保 雅裕

2021 14 Jun

テナントの格合わせで顧客の買い回りを逃さない

武蔵野線・吉川美南駅南口にあるイオン吉川美南の東街区「アクアイグニス吉川美南」のオープン内覧会に出向いた。
北西に2駅目の越谷レイクタウン駅には「イオンレイクタウンkaze」、南東隣駅の新三郷駅には「ららぽーと新三郷」と大型商業施設があり、商圏の重なりが気になるエリアだったので、興味深く見学。
しかも既に開業している西街区にはイオン本体が出店。専門店エリアのテナントには所謂、高感度ファッション専門店の集積などは全くない。
今回オープンしたのは、2012年に三重県にオープンした「癒し」と「食」の複合温泉リゾート「アクアイグニス」の温浴施設「アクアイグニス武蔵野温泉」と高感度な飲食やスイーツなどがテナント出店していた。
世界的パティシエ、辻口博啓のショコラトリー「LE CHOCOLAT DE H(ル・ショコラ・ドゥ・アッシュ)」が1~2階のメゾネットスタイルで出店。さらに彼の人気ベーカリー「Mariage de Farine(マリアージュ・ドゥ・ファリーヌ)」、「世界の料理人1000人」にも選ばれたアルケッチァーノの奥田政行シェフがプロデュースする自然派イタリアン「PASTA & PIZZA il che cciano(パスタ&ピザ・イル・ケッチァーノ)」、南青山にある「4000 Chinese Restaurant (ヨンセンチャイニーズレストラン)」のほか、五反田や麻布十番で火鍋専門店オーナーを務める中華の達人、菰田欣也シェフプロデュースのカジュアルチャイニーズレストラン「麻婆点心館」、そして回転寿司激戦区と言われる金沢市でトップクラスの「金沢まいもん寿司」が揃う。いずれも埼玉県初出店ばかりだ。それぞれにグレード感のあるテナントで、つまりは西街区との落差を感じざるを得ないということ。
東街区を楽しんだ客が、西街区のテナントで満足できる訳もなく、それらのファッション消費を取りこぼすことになると考えられる。
世界的に著名なシェフ・パティシエのプロデュースによる食の提供、ひと味違った空間づくりが話題となり、飲食、スイーツやベーカリーの固定客となった人々が、ここを目指して来ても、買い回りが期待できないのではもったいない。
但し、ららぽーと新三郷との直線距離は約1kmと目と鼻の先。「ファッション消費は、こちらで」となってしまう点も懸念される。
「テナントの格を合わせる」というテーマは、以前、武蔵小杉の商業施設についても書いたが、違和感のあるリーシングは拭えない。もっとも街区ごとに違う建屋だからという考えもあるかもしれないが。

「LE CHOCOLAT DE H(ル・ショコラ・ドゥ・アッシュ)」

「Mariage de Farine(マリアージュ・ドゥ・ファリーヌ)」

「PASTA & PIZZA il che cciano(パスタ&ピザ・イル・ケッチァーノ)」

「金沢まいもん寿司」

「麻婆点心館」